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     ブラジル漂流記 (Draft in Br...  (最終更新日 : 2021/01/13)
マラニョンの旅Ⅲ 魅惑のアウカントラ [画像を表示]

マラニョンの旅Ⅲ 魅惑のアウカントラ (2011/06/19)
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教会の遺跡


 桟橋も何もない砂浜に、船が停まっていた。「これで行くの?」ちょっと心細くなってパウロに聞いた。「そうだよ。向こうには、パトリシアというガイドが待っているから」旅行社のオーナーにもかかわらずいつも30分~40分遅れてきて一度も時間通りやってこないこいつの言葉は信用できなかった。しかし、ここまで乗りかかっては彼の言葉を信じるしかなかった。アウカントラ行きの船は静かに砂浜を離れた。
 アウカントラは船で約2時間。17世紀には貴族や大金持ちの大邸宅があったという。砂糖と綿の輸出で、州都サンルイスと、輸出の中心地としての座を競いあい、サンルイスがその座を射止め、アウカントラは衰退の一途を辿っていった。豪奢な教会や宮殿、大邸宅は崩壊していき、アルカントラはすっかり寂れてしまい廃れてしまう。
 かつて繁栄を誇ったというアウカントラの町に何故か惹かれた。今はどうなっているのだろう。そんなことを考えているうちに船はアウカントラの桟橋についた。やせっぽちの40代後半らしき女性がこっちに手を振っている。パトリシアだ。
 聞くと彼女はアルゼンチン出身でもう14年もアウカントラにいるらしい。その間3回結婚し今は独身だという。この町が好きで好きでたまらないという「アルカントラはすばらしい所よ。どこを撮っても絵になるわ」サッカーボールほどの岩を道に埋めただけの坂道を登りながら彼女はよく喋った。途中会う人会う人が彼女に挨拶をしていく。「おい、パトリシア」「おいマルコス」「人が少ないから町の人は皆しりあいなのよ」
 広場につくと巨大な教会跡が風雨に耐えながら残っていた。茶褐色の石積みからでも、かつての繁栄がわかるような立派な教会だった。パステルカラーの家並みに混じって、邸宅や宮殿の茶色い石積みの遺跡があった。その遺跡の中で馬がのんびりと草を食んでいた。その脇を学校帰りの子供たちがワイワイ言いながら歩いていく。なんとも不思議な光景であった。
「たった3時間じゃ、アウカントラの良さを見てもらえないわ。もう1泊すればよいのに・・・」彼女が言うように、この寂れた町にはなんともいえない魅力があった。後ろ髪を引かれながら、帰りのフェリーに乗り込んだ


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