マラニョンの旅Ⅴ マングローブ林 (2011/06/21)
旅はまだまだ続く。予定ではレンソンイスから到着すると、すぐにカブレというプレギソーゾ川の河口にある場所に行くようになっていた。 1時間近く予定の時間を過ぎて、待ち合わせのホテルに着いた。本当にカブレにいけるのだろうか? ここまでならサンルイスまでのバスもたくさんあるし、なんとか自力で帰ることができる。しかし、カブレまで行ってしまえば帰るのは容易ではない。迎えが来なければそれはそれでいいと、居直っていた。大体、誰が連れて行ってくれるのか、カブレの後はどうなるのかも知らされていなかった。 ホテルの受付に聞くと、ついさっき迎えの男性が来ていて、またすぐ戻ってくるという。30分後その男性が現れた。これから舟に乗ってカブレまで行くという。痩せた30代後半のモレーノで名前はフィリッピ、人はよさそうである。町の舟着き場から小さなアルミ製のボートに乗り、プレギソーゾ川をひた下る。川沿いの風景はアマゾン川の支流そっくりである。どんどん下って行くと、マングローブの林が広がる。途中、マングローブ林の中にはいってくれた。弓のように曲線を描く呼吸根が水中からヒュイヒュイ出て美しい。その美しさに目を見張った。 マングローブ林は海の水質浄化に大きな役割を果たすと共に、カニやエビなどのさまざまな動物に生息環境を与えている。マングローブが「命のゆりかご」と言われる所以である。スマトラ島沖地震以来、マングローブが自然の防波堤となることで津波被害の軽減の効果があると言われるようになったそうである。大学時代、林学科に席をおいていたことから、一時期、マングローブ林の生態系に興味を持ち、研究してみたいな、と思ったこともあった。今や遠い昔である。 夕暮れがちかづき、ゆっくりと周囲が青くなり、闇の黒へと代わり始めるころ、やっとカブレについた。僕をカブレに届ける仕事を終えたフィリッピは挨拶もそこそこに暗くなった川を帰っていった。彼に一人置いて行かれてすっかり心細くなってしまった。明日は誰が何時に迎えにきてくれるのかもわかっていない。大丈夫なのだろうか? まあ、なんとかなるだろう、ここまできたらそう思うしかなかった。
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