マラニョンの旅Ⅵ 無の魅力、カブレ (2011/06/24)
 | 川と海に挟まれた500mほどの土地がカブレ。 プレギソーゾ川の夕暮れ、岸にはマングローブの芽がひっそりと育つ |
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ホテルやポウザーダ(民宿旅館)の食事は一般的にどこでも高いので町まで散歩がてら夕食を食べに行こうと思っていた。 「夕飯を食べに行きたいんだけどどこかいいレストランはあるかな?」 「?? 隣のポウザーダかな」 「レストランはないの?」 「ああ、この辺には村や町はないんだ。あるのは6軒のポザーダだけさ」 町も村もないなんて! そんな所にポザーダがあること自体が不思議であった。ポウザーダしかないのなら、何処で食べても同じである。結局このポウザーダで夕食を食べることにした。2人分で46レアル(2300円)。こんな田舎にしてはいい値段である。いや、こんな田舎だから、この値段なのだろう。じーっとメニューを見入っている僕を見て、勘のいい食堂のおばさんが一人分で作ってあげる、と言ってくれた。ペスカーダ・アマレーロのエスカベッシュ。ようするに魚のテンプラにトマト味のあんをかけたモノである。魚が新鮮なせいか、意外にあっさりしていておいしかった。腹もくちて、部屋に戻ろうとすると、支配人のペドロが「自家発電の電気は夜10時までだから、それと携帯の電波は届かないから」そう言って蝋燭を渡してくれた。 自分のバンガローに帰って、電気がなくならないうちに部屋を点検してみた。もちろん、テレビも電話もない。ガランとした味もそっけもない部屋であった。何もない所にある、何にもない部屋、分厚い板で作られた無骨なだけの小屋に妙な親しみがわいた。 ベッドには蚊帳が吊ってあった。ということは、かなり蚊がおおいのだろう。以前、田舎で使った蚊帳には穴があいていて、蚊がわんさかと入り込み悲惨なことになった。調べてみたが幸いなことに穴はなさそうであった。電気のあるうちにカメラの電池を充電しなくてはならない。ブラジルの場合、コンセントはどこに行ってもだいたい日本で使っているモノでも利用できる。しかし、ここのコンセントは丸用で四角が入らない。困ってしまい、ペドロに頼んで、レセプションに唯一ある四角用のコンセントを使わしてもらった。 窓を閉め切って寝ていたせいか、途中暑くて何度も目が覚めた。汗でシーツが体にくっつき寝苦しい。これほど暑いとやはりクーラーが欲しい。つらいな、そんなことを思っているうちにまた睡魔に襲われ、最終的に起きたのは朝5時半だった。この辺の日の出はだいたい6時ごろだということは解っていたので、まだ薄暗い海に行ってみた。 それにしても汚い海岸だ。ペットボトルやらハッポウスチロール、木片がいたるところにある。見渡す限り人っ子一人いないが、人の痕跡が残るそんな海岸が永遠に続いていた。もし、現代の無人島に流れ着いたならこんな感じかもしれない、そんなことを考えているうちに、どんどん明るくなっていった。 ほとんど雲が空を覆っていて、大した写真がとれずがっかりして帰ってくると、僕すぐ隣のバンガローにいる客は、窓から、ドアから、すべてを開け放して寝ていた。海風がバンガローを通り抜けいかにも涼しそうである。ああ、こうやって寝るんだ! 都会に住む僕には、開け放して寝るという発想が浮かんでこなかった。いつ泥棒が入るかわからないので扉や窓は閉めて寝るもの、という凝り固まった考えしかなかったのである。 綺麗な海岸も、電話もテレビもクーラも熱いシャワーも、何もない所ではあるが、そんなカブレが何故か気に入ってしまった。いつかもう一度来たい。カブレはそんな場所であった
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