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     ブラジル漂流記 (Draft in Br...  (最終更新日 : 2017/07/20)
マラニョンの旅Ⅶ エドアルドの憂鬱 [画像を表示]

マラニョンの旅Ⅶ エドアルドの憂鬱 (2011/06/26)
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枯れたマングローブの根塊が続く。流れ着いたのか? この辺までずっと生えていたのか?


カフェ・ダ・マニャン(直訳 朝のコーヒー、一般的に朝ごはん)をたっぷりと食べた後、いつ迎えがきても良いように荷物を準備する。ペドロに聞くと、ここからピアウイ州に行くには道は無く、潮が引いた海岸をいくしかないのだという。だから、迎えも潮の引き次第らしい。とんでもないところに来たもんだ。今更ジタバタしても仕方が無い。
 バンガローの入り口にハンモックをかけ、海風に吹かれながらゆったりと迎えが来るのを待つことにする。もう、これ以上先のことは考えても仕方がない。なるようにしかならない。30分ほどたっただろうか、ウトウトしかけたところに、男の影が視野に飛び込んできた。
「アキノリ?」「そうだけど」「迎えにきたよ」「えっつ!?」「エドアルドだよ、よろしく」
 思ったより早い時間の迎えにびっくりしてしまった。
 イソイソと彼の車に乗り込む。後ろの席にいる男を指しながら、「彼はガイドのマルセロ」。エドアルドは巨大な男で身長は2m、ちょっとクリントイーストウッドのような50代の白人系の男であった。茫洋とした愛想のない、ちょっと荒んだ雰囲気を持つこの男はとても観光関係の仕事をしているようには見えなかった。後ろのマルセロは後ろの席で横になって寝ている。これでガイドなのだろうか? 堅牢一徹といった感じのランドローバーは海岸をひた走る。まさにエドアルドにはぴったしの車である。「この辺を走るにはランドローバーかトヨタのバンデランティス(トヨタのブラジル製4駆、生産終了)が一番さ。最近の車は電子制御ですぐ壊れるしね。バンデランティスは車の中で顔がギリギリ出るくらいまで水没してもガンガン走ったよ」そういって、顎に大きな手の甲をつけて水の位置を示した
 人っ子一人いないと思っていた海岸にも、ときおり漁師が網を張って漁をしていた。途中から内陸に入り、30センチほどのイネ科の草が生える草原の中を右に左に揺られながら走る。風と草原の広がるパタゴニアの大平原を思い出してしまった。
 丘陵にあがった所で停まり、エドアルドは1服する。その間写真を撮っていると「写真を撮ったら金をもらうよ」カメラを向けてもいないのに、冗談か本当かわからないような言い方でエドアルドは言葉を投げてきた。確かに、長年、風化したような寂し気な表情は被写体として惹かれる部分はあるが、無理に撮ろうなんて気持ちはさらさらなかった。以前、カメラマンに写真を撮られて嫌な思いをしたことがあるのだろう。
 丘陵をおりきり、大きな水溜りがあちこちある平原に入る。後ろで寝ていたマルセロがむっくり起き上がり、そこは危ない、ここは大丈夫などと指示を出し始めた。「この辺はガイドがいないと大きな穴に入り込んで大変なことになるのさ。彼はそのためのガイドなんだ」1時間ほど走って小さな町に辿りつきマルセロを下ろした。
 おかしな町で、まだ朝10時だというのに、ビールを呑んだり、玉突きをしたり男たちが集まってガヤガヤしている。一方、女たちは川で洗濯に精をだし、庭一杯にカラフルなTシャツやスカートが干されてあった。こんな町に滞在しても面白そうである。
 この町からアスファルトの道となり車は快調に走り始めた。道はきれいに舗装されているが、古ぼけた農家や、荒れ果てた土地がなんとも対照的である。何回かそんな風景を通り過ぎたとき
「昔はパライーバまで道が悪くて1日かかったものだよ。今は3時間ほどでいけるよ。道がよくなったのはいいが、今の若い者は誰も畑仕事なんかしなくなった。親に泣き付いてバイクを買ってもらって皆モトタクシー(バイクのタクシー)さ」ほとんど自分から話をしないエドアルドが吐き捨てるようにポツリと言った。
 
 
 


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