11・25 ブーフォ(まぬけ) (2006/11/26)
「昼は、私はいないから、昼ごはんを作ってね」と彼女に頼まれていた。 「今日は僕がご飯を炊いたんだよ」と息子が誇らしげに言ったことが頭に残っていたので、息子に気軽に「ご飯を炊いててよ」と電話で頼んだ。 アパートに着くと、ご飯粒がいっぱい、床にこぼれていたのでなんとなく嫌な予感があった。息子の様子も何かおかしい。問い正すと、 「釜を使わずに、機械にそのまま水とご飯をいれちゃった」と申し訳なさそうにいう。 思わず、かっときた僕は 「ブーフォ(まぬけ)!」と息子に言ってしまった。 ブーフォとはポルトガル語でロバの意味で、失敗したときや、まぬけな行動をしたときになげつける言葉である。できるだけ人には使わないように、とくに子供には使わないように気をつけていたのだが、頭に血が昇ってしまい口に出してしまった。 この炊飯機は3つ目、日本に帰る人に安く譲ってもらったものでおいしく炊けるので気に入っていた。2つ目は、以前いたお手伝いさんが、水洗いしてしまってやはりおしゃかになってしまった。ブラジルでは炊飯機はまだ一般化していないので、買うとなると結構高い。 ふとゴミバコを見ると、たくさんのお米が捨ててある。「これはどうしたのだ」と聞くと、「二人分作ろうと思って入れすぎたから捨てちゃった」と半分ベソを掻きながら息子はいう。ブラジルの、安くて豊富な食べ物のおかげで僕自身も無理に食べるようなことをせずに、食べ物を残したりするようになっていたが、どちらかというと古い人間に属する僕は、食べ物を、とくにご飯を粗末に扱っているのをみると頭にくる。子供の頃、ご飯を残すと、母親に「農家の人たちが一生懸命ご飯を作っているのだから粗末にしたらだめよ」と怒られたものである。白いご飯が捨てられているのをみて、引きかけていた血が再び頭に逆流した。 「ブーフォ(まぬけ)!」ますます息子はしゅんとしまった。 「このご飯は、おまえが洗って、今日の夕飯と明日食べるんだ」というと、「どうやって洗えばいいの?」と聞いてきたので、再び「ブーフォ(まぬけ)!頭を使え!」 最近ませたことをいうようになっていたので、だいたいのことはできると思っていたのが間違いだったのだ。まだまだドジな9歳の子供だったのである。 料理を作るときは、いつもできるだけ手伝わせるようにしていたし、何かをするときは実際に見せるようにしていたのだが、今後は実際にやらせなければと実感した。 頭が冷えると「ブーフォ(まぬけ)!」と息子にののしったことを深く反省した。普段、できるだけこの言葉はで人に使わないようにしているのだが、ついカッしてしまい使ってしまった。以前友人に「子供はできるだけ、いいところを見つけて、褒めて育てるのが、子育てのコツですよ」と言われたことを思い出した。 夕方、また何かドジなことを息子がしたのだろう。母親が「ブーフォ(まぬけ)!」と罵った。彼女自身が僕にこの言葉は悪い言葉だから使うな、と常日頃注意しているくらいだから滅多に彼女がいうのを聞いたことがなかった。だから意外だった。 「今日は、二人から「ブーフォ(まぬけ)!」っていわれちゃった」と言って息子はしょげていた。それを聞いて、思わず、変な意識を植え付けなかったらいいがと心配してしまった。どこかいいとろこを見つけて褒めてあげなくては! 今後、「ブーフォ(まぬけ)!」は使用厳禁の言葉とする。
 | 夕方から大雨になった。たくさんの床上浸水の被害が出そうだ。サンパウロは無理な都市の拡がり方をしているので、自然災害には非常にもろい。 |
|
|