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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2020/09/17)
8・22 奴隷の怒り?

8・22 奴隷の怒り? (2007/08/25)  昨夜、夜行バスにのり、朝5時にサンパウロの隣の州、ミナスジェライス州のウベラーバについた。比較的眠れたので、めちゃくちゃ疲れたという感じはなかったが、身体の心がどこか疲れているような感じがする。
 6時にターミナルに迎えにきてくれることになっているが、本当に迎えにきてくれるのか、少々心配である。そんなことを考えながら、ターミナルの椅子に座っていると、一人の青年が僕の方を目指してやってくる。
「AKINORI?」
「LELIO? 朝早くありがとう」
 彼は、日系のメスチッソ(混血)で、まだ大学を出たばかりの22歳。そんなに若くして、彼はもう自分の旅行社を経営しているのだ。これから2日間案内してくれることになっているのだが、その芯の強そうな顔を見て、少し安心した。
 今日の予定は既に彼に立てられており、その足でファゼンダ(農場)に行くことになっていた。このファゼンダは200年前からある古いもので、代々子供たちが受け継いできたらしい。オーナーは、ちょっとアメリカのマフィア映画にでてきそうな、渋めの53歳のイタリア系である。
「この建物は俺のひいおじいちゃんの代からのものさ。なかなか雰囲気がああっていいだろう。ここに人を呼んで、田舎の生活を楽しんでもらうような場所にしたいんだ」
 レーリオにいわせると、ここのオーナーはいろんなアイデアを生かして、なんとかこの農場を存続させていこうとがんばっているらしい。そのひとつが、農園内の水源地を生かした淡水魚の養殖、30の池にはティラピアやドラードなどの魚が育てられている。それでもなかなか経営が難しいらしく、園内の木材を切り出して、無骨な椅子やテーブルを作っている。
 園内を案内してくれることになり、後をついていくと、
「ここが、奴隷達を入れていた場所だよ。夜はこの鎖でつないでたんだ。
ほら、俺が手を伸ばしても届かないくらいから、当時の奴隷は結構おおきかったんだ」
 そういって見せてくれたところは、古い家の床下に当たるところで、ぽっかりほら穴のように開いた入り口の先には深い暗闇が広がっていた。柱の部分には奴隷をつないで置くための鎖がいまだに残っていた。
 撮らない方がいいだろうな、と思いつつもついつい数枚の写真を撮ってしまった。そのとき、なにかいやーなかん感じが背中に広がった。やっぱり撮らなかった方がよかったかな、と思ったが、そのときは深く気にしなかった。
 大人が5,6人が、手をつないだの大きさの巨木あるというのでさらに原生林に向かった。その原生林の入り口には小さな小川が流れていた。その小川はやっと飛び越えられるほどの川幅で、カメラを持っている僕は慎重になんとか飛び越えた。原生林というだけあって、高木に光がさえぎられ、ほとんど下草や潅木が生えていない。思わず、以前入ったアマゾンの原生林を思い浮かべる。ここにはアルマジロやアリクイなどの動物も生息しているらしい。30分ほど歩き回って探したがついにその大木は見つからなかった。帰りオーナーが気を利かせて、近くにあった倒木を小川にかけてくれた。オーナーが渡り、レーリオが渡り、僕の番になった。一応、大丈夫か足で木を踏んで確かめてみる。びくともしない、大丈夫である。右足を木におき、体重をかけた瞬間、コロリと木が回った。と思うと僕は水の中に落ちてしまった。瞬間、カメラをもっていた右手をあげる。カバンの中に数本のレンズがあったので慌てて起き上がろうとするが、うまく起き上がれない。傍から見ていると、多分水の中をもがいているような格好だったろう。やられたー! なんとか起き上がってみると、カメラは少し表面に水をかぶっているだけで、問題はなかったが、1本のレンズに少し水が入っていた。今まで一度も、こんなことになったことがないだけに、非常にショックであった。それでも被害が少なくてよかった。これほど完全に水に落ちて被害がこれだけだったので本当にラッキーだった。さすがに謝りはしなかったが、オーナーは自分のかけた木のせいだと思ったのか、ズボンや靴を貸してくれ、本当にかいがいしく僕の世話をしてくれた。奴隷がつながれていた場所を撮った報いか? シャワーを浴びながら、ふとそんなことを思った。多分実際は、夜行バスでついたばかりで疲れていたのだと思うが、嫌な感じを受けながら写真を撮ったことが大きな間違いであった。この最初の出だしのおかげで、最後までなんとなく冴えない旅となった。
 
 


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