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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
9・2 ツクナレ運搬その2

9・2 ツクナレ運搬その2 (2007/09/04)  朝起きて早速、バケツを見ると、無事ツクナレ達は4匹とも生きていた。これから約6時間かけてサンパウロに帰らなければならない。途中、ホテルの取材が入っているからヘタをすると8時間以上かかるかもしれない。でも、今の状態だったら大丈夫だろう。
 両脇をサトウキビ畑が延々と続く道路をサンパウロに向けてひた走る。テラロッシャの赤い土とサトウキビの緑の鮮やかさが目に染みる。最近、頭を悩ましていることが、脳みそにがっちりと食い込んでいてなかなかクリアーにならない。あーあ、ひとりでにため息が口をついてでた。バス旅行はいろいろな想像ができてすきなのだが、問題を抱えているときはよくない。
 サンパウロまであと2時間のところで、リゾートホテルに到着。川に面した素敵なホテルである。派手さはないが、家族でゆったりと過ごせそうだ。すっかり気に入った。いつか車を購入してこんなところで1週間くらい何もかも忘れて過ごしたいものである。こういうところを見ると、つくづくお金が欲しくなる。お金があるとブラジルでは日本以上にいろんなことができるのである。
 ここで一旦水を替えようかどうしようかと迷ったが、バケツの中をみることもせず、まあ大丈夫だろうと簡単に決断してしまった。普段の面倒くさがりの悪い癖が出たのである。このホテルには、オーナーの趣味の飛行機やクラッシクカーが格納庫に展示されていた。運転手が大の機械マニアで、取材が終わったにもかかわらず、ああだこうだと質問をしたり、ドアを開けたり閉めたり、一向に行こうといわない。マニア的な感覚はわかるのでなにも言わなかったが、自分の立場を完全に忘れてしまっている。
 車に帰って、バケツを見ると、4匹のツクナレは白い腹を上にしてもう瀕死の状態であった。温度が上がりすぎたようである。ここまできながら・・・・。残念でたまらなかった。冗談好きの運転手は、こちらの気も知らずにジョークを飛ばす。お前のせいだ! お前の! と言いたかったが、死んだものはどうしようもないし、ぐっと我慢する。だいたいブラジル人は繊細さに欠ける。もし逆の立場であったら、きっと怒るだろう。
 途中止まった休憩所で、ツクナレをビニールに入れてゴミ箱に捨てた。と男がやってきて、「今、死んだのか」としつこく聞く。そうだよ、と答えると、僕がゴミ箱に入れたツクナレをさっととって自転車で行ってしまった。僕の我侭から、ツクナレに対してすまない気持ちで一杯だったが、最後に人に食べてもらえることになったので、少しほっとした。
 それから後のサンパウロの旅は、一転して味気ないものなってしまった。
 


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