10・30 穴場 (2007/10/31)
今日はいったいどれくらい歩いただろう。 自分でも解らないくらい歩いたのだが、それでも友人は、まったく疲れた様子がない。この友人は、かなり変わった部類の人間で、その知識の豊富さと体験から、日本のある業界でも一目置かれた存在である。数ヶ月ぶりにあった彼は、髪がぼさぼさ、サンダルに長めの短パン(日本語でなんと言うのだろう?)といういでたちで現れた。まったくもって、年齢不詳、国籍不詳である。彼はサンパウロの超穴場をよくしっており、今日も穴場の飯屋に連れていってくれるという。 メルカードムニンシパルを過ぎ、汚れきった川をわたり、まず普通の人はいかないような、雑多で汚い地区に入り込んだ。もうそこは、サンパウロというよりは、ノルデスチ地方(東北伯)の貧乏地区といった様相である。彼はそんな中をドンドン進んでいく。そしてたどり着いたのが、レンガ造りのメルカードだった。メルカードムニンシパルが表の市場としたら、こちらは裏の市場と言えそうだ。薄暗い建物の中は小さなボックスがたくさんあり、野菜や果物が売られている。時折みかける東洋人は、顔と雰囲気から勝手に判断すると中国人のようである。売られているモノがもう少し貧弱であったら、もうノルデスチのメルカードそのものである。こんなところがサンパウロにあったとは驚きである。 「ここは、あまり写真を撮らない方がいいでしょう。あとでうるさいことになるかもしれないから」ちょうど、セグランサと書いたジャケットを着た管理人らしき男が歩いてきた。最近のサンパウロはどこでも撮影に関してはうるさいのである。 そして辿り着いたのが、日系人らしき東洋人が経営する飯屋であった。 「食べ放題で7レアルです」すでに1時を回っていたが、まだ数人の男たちが皿に山盛りの飯を食べていた。少々なりのみすぼらしいおじさんは、3皿にご飯、サラダ、肉とおかずを盛り分け、食べている。こんなに食えるのか、と思って見ていると、結局彼はすべて食べてしまった。驚きである。 セルフサービスになっており、数種のサラダ、肉、スパゲティ、かぼちゃの煮つけ、ご飯などが置かれてある。さっきのおじさん同様に客はみんな驚くほどよく食べる。 「ブラジル食が大量に食べたくなったら、ここに来るんですよ」 確かにサラダは新鮮で、スパゲティは固めにゆでてあり、かぼちゃの煮込みも絶妙の味付けである。ちょっとしたレストランで食べるよりずっとおいしい。さらに値段も安い。 「これは、穴場ですね! 本当に」そのおいしさに僕も少々興奮し、くちゃくちゃ肉を食べながらいうと、彼はうれしそうな顔で 「ここは、親しい人で信頼できる人でないと教えないのです。ちょっとおしゃれぶるデザイナーや業界の人間に言うと、あっという間に広まって、荒れてしまうんでね。以前ある穴場のレストランがあったのですが、そういう人間が大量に来るようになって、味は落ちるわ、値段はあがるわで、もういけなくなってしまいました」と真剣に言う。 ちょっと普通の人間はとても来そうにない場所であるが・・・。 少々一人では来ずらい場所ではあるが、是非また食べに来たい超穴場であった。
 | この川を渡ると、雰囲気は一変して、ノルデステになる。 |
|
|