11・9 僕は副支配人 (2007/11/12)
ほとんど観光客がいない、季節はずれの山の中の避暑地ノレストラン。 町の一番大きなメイン通りも夜8時を過ぎると、ときおり野良犬が歩くぐらいで、人っ子一人みられない。 営業していると思われるレストランの重たい扉を押し上げて入ると、大きな画面のテレビをガルソンが退屈そうに見ていた。 「開いてる」 「営業中ですよ」 僕の顔を見て、ほっとしたような表情を浮かべながら、ゆったりと立ち上がった。 彼の後ろでは、誰にも相手にされなくなったテレビの中で、解説者が淡々とニュースを流し続けている。 「僕が最初の客?」 「そうです。ハイシーズンには、この通りも人で歩くのが大変なくらいなんですがね。今はほとんど誰もいません。でも、うちには1日に3,4組のお客がくるんですよ。この辺では、これでもいい方です」生真面目な顔で彼は言った。 名物の鱒料理を頼む。上にのった香辛料が少々辛いが魚が新鮮なせいか結構いける。 「働いているのは一人だけ?」 「今日は着ていませんが、もう一人、支配人がいます。私が副支配人、のようなものです」 「副支配人!? 」料理人以外二人の従業員しかいない店で副支配人はないだろう、と思いつつ聞き返した。 それに、気がついた彼も少し照れくさそうに「そうです。副支配人です」と繰り返した。 店の名刺をもらうと、裏にはしっかり彼の名前EDUARDOが書きこまれていた。 「おいしかったよ。副支配人のエドアルド」と笑いながら握手を交わす。僕を入り口のドアの所まで送ってくれながら、 「副支配人ですから・・・」彼も笑いながら小さな声でつぶやくように繰り返した。
 | ほとんど観光客が見られない、町のメインストリート。ブラジル人は寒いときに寒い所に行き、暑いときには暑いところに行って楽しむ。日本人のような避暑という感覚はあまりない。 |
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