11・15 出産そのⅡ (2007/11/16)
家にいる、サクラとニンジャを事務所に、アズミを家に運ぶ。サクラとニンジャも、何かあったのだな、と気付いたのかなんとなく神妙である。 アズミは新しい場所におちつかないのか、部屋を嗅ぎまわる。ダンボールの中に布をしいてやるとやっと落ち着ける、と思ったのか、その中に入って横たわった。 陣痛は始まっているようだが、なかなか出てこない。1時間後やっと破水したようでしきりに舐めている。お腹をさすっていると、お尻の部分が盛り上がってきた。何回か盛りがるが、それでもなかなかでてこない。待ちくたびれてテレビに気を取られているうちに、ふと見ると緑がかった透明の膜に覆われた小犬が出掛かっていた。ぽろりと出そうででない。彼女が手助けをしてやっとで出産。サイトにはすぐ取り上げて、膜を破ってへそのうを切ってやるとあったが、彼女の「アズミは全部ひとりでできるわ」という言葉を信じて見ることにした。アズミは膜を噛み破り、心配していたへそのうも自分噛み切ってくれた。誰にも教えられていないのに、このような一連の行動ができるなんて不思議でたまらなかった。本能とは凄いものである! へそのうも、羊膜もアズミはすべて食べてしまった。息をしていなかったら、小犬を振ってやって、というサイトの注意を頭に思い浮かべていたが、その心配もなかった。「自然て凄いわね。エドアルド」息子に彼女がいうと、息子も興奮した面持ちで、アズミの作業をじっとみている。やはり、知識だけでは何もならない、彼女は、お産の知識を詰め込んでいた僕より的確に行動し、アズミのお産を手助けしていた。女の強さと、経験ある者の強さを思い知った。 そして2匹目。全然でそうにない。お腹をさする限りでは、もう1,2匹いそうである。1匹目を産んで、アズミも気が立っているのか、さわろうとすると僕にも唸る。やさしく名前を呼びながらやっと触ることができた。 「獣医に電話してみたら」と彼女。 休みの日に獣医が来る訳ない。ましてや、ここはブラジル。人間のお産でも自分の都合に合わせて平気で予定を早めて帝王切開をするような所なのに、犬のお産に心配してくるわけがない。ブラジル人の彼女がそんなことを言うのがおかしくなった。 お腹をさすっているうちに、再び陣痛が来た。何度か繰り返し、やっと出産。アズミは、再び1匹目と同じ行動を繰り返すが、どうも今回は舐め方も膜の破り方も雑なような感じがする。疲れてきたのだろうか。 犬のお産に、息子も神経質になっていたようで、夕食を食べていなかった。2匹目が生まれてやっと落ち着き、簡単な夕食をとった。 「僕は黒い犬が欲しいんだけど生まれないね」 小犬が生まれたら1匹は残す約束をしている。夕飯を食べ終わると、日記を書くんだ、と言ってノートを取り出して書き始めたのには少し驚いた。本を読むのも嫌いだったのに、日記を書くなんて・・・。少しでも、文字になれるようにと、ナルトのポ訳の高い漫画を買い続けてやった甲斐があった。 明日が早いという彼女と息子は寝ることになり、僕一人でついてやることになった。僕の予想ではもう1匹いそうな感じである。それから20分もしない間に、こんどはするりと小犬がでてきた。真っ黒である。 一連の行動を終え、アズミもやっと一息ついたような顔をしている。しかし、お腹の中にまだ残っているのか僕には判断がつかない。肉のスープなどをあげて食べなかったら、まだ残っているし、食べたらお産は終わり、という一文を思い出し、肉がなかったので卵を茹でてあげると、喜んで食べた。多分、これで終わりだろう。少々、小犬が押しつぶされたりしないか、心配ではあったが、気疲れからかさすがに疲れていた。 「よくがんばったね、アズミ」軽く頭を撫でてやり僕も床に就いた。今日は長い1日であった。
 | 第一子の誕生。出るまでが大変だった。本能でアズミは膜を破り、へそのうを切る。自然の摂理とは大したものだ。 |
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 | 3匹目はすぐに生まれ、ほっと一息。よく頑張ったアズミ。 |
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