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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
2・12 夜の病院

2・12 夜の病院 (2008/02/13)  午前2時、彼女の具合が急に悪くなり、救急病院に駆け込んだ。前から腎臓付近が痛いらしく、以前病院に行ったときには石がある、と言われていた。今回も同じような付近が痛いというので、多分石だろうと思い、それほど慌てはしなかったが、あんまり痛そうにしているので、彼女は独りで行くから大丈夫だと言い張ったが、結局ついていくことにした。
 夜の病院は、患者も少なく静まり返っていた。まだ、若い感じの男の医者が出てきて、彼女から話を聞き、軽く診察をした。驚いたのは、彼女が苦悶の表情をしているのに、会うなり、彼女に「こんばんわ」と言って握手を求めてきたことだ。彼女は痛さを堪えながらやっと手を出した。こんなに痛そうにしているのに、握手もないだろう、医者のその対応が不可思議であった。ほとんど病院に行かない僕には、これが普通なのかどうか解らない。患者を安心させるために、このような行動をとっているのか、あまりに多くの患者を診すぎていて、これくらいは大したことないとすぐ察知したのか、よく解らない。
 診断のあと、今度は治療室に連れていかれ、そこで点滴を受けた。点滴の用意をしていた看護士に彼女が聞いた。
「あの先生は何科が専門なの?」
「知らないね~。先生は一杯いるから・・・。多分インターンじゃないかな」
 診察も治療もほとんど流れ作業のようになっていて、特に夜はインターンやらアルバイトの先生が多いのだろう。しかし、内部でも誰が診察していて、誰が治療しているのか、そんなこともさえも知らないで対応されていると考えるとかなり怖い。
 点滴を始めて具合がよくなり、安心したのか、他に誰も居ない点滴専用の部屋で彼女はよく喋る。僕は疲れ、ウンウンと頷くがやっとである。
 点滴が終りかけた頃、採血と採尿の結果が出たらしく今度は女医がやってきて、説明し始めた。どうやら化膿はしてないようである。専門の医者に行ってみてもらいなさい、薬はこれこれを、というようなことを、早口で言って行ってしまった。多分、一日何百人もの患者を診るには、このような流れ作業じゃないとやっていけないのだろうが、もし何かあったら責任の所在は何処にあるのだろう、妙に気にかかった。彼女は痛みがほぼ治まり、手を貸す必要も無く、そのまま病院を後にした。
 病院にほとんど行ったことのない僕には、流れ作業的な病院とその対応、すぐよくなった彼女の状態など、まるで、ロボットが修理工場で修理を受けているような無機質感を強く感じた。


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