2・27 撮影 (2008/02/28)
今日は劇場の撮影。 演劇の写真を撮るのは好きだから、結構楽しみにしていた。写真を撮る人間は、できるだけいいポジションで、いい写真を撮りたい、という意識が強い。だから、多くの戦場カメラマンは命を落としてきた。写真を撮り始めると危ないという感覚が麻痺し、1枚でもいい写真を撮りたいという欲求が勝ってしまうのだろう。僕のような人間でも、もし戦場カメラマンだったら、怖さを忘れてしまうかもしれない。もっとも、意気地がないから、まず、そんな危ない所にはいかないし、行きたくない。だから、ブラジルには戦場並みに危ない所はいくらでもあるが、そんな所にはできるだけ近寄らない。 今日の会場は思ったより静かで、シャッターの音が思った以上に響く。でも前回同じ演目で撮ったときは誰も文句を言わなかったから今回も大丈夫だろうとタカをくくっていた。音のことは気にするには気にしていたが、撮り始めると忘れてしまっていた。 ところがどっこい、一幕目が終わると、「客が迷惑だから、別の所で撮って欲しい」という。しかし、今の席はそこそこの写真が撮れるギリギリの線の席だった。僕自身もむっとしていたこともあり、「これ以上後ろだと、撮れませんね」とはっきり断った。「それじゃ、できるだけシャッターは切りませんから」というと、それじゃあ困る、できるだけ撮って欲しいのだという。この頃になると、カッとなっていた頭も大分冷静になって、できるだけ、迷惑のかからないような撮り方をするから、ということにして同じ場所で撮り続けることにさせてもらった。 二幕目を撮り始めると、さほど撮ってもいないのに、後ろの席にいた劇場関係者と名乗る男が「迷惑をしているからあまり撮らないように」といかにも権力を振りかざしてくるような感じでいってきた。ブラジル人はすぐに威張っていうから腹がたつ、それでもぐっと堪えて、とりあえず軽く頷く。 気持ちの中では、「アホタレ」と叫んでいたが。 以前はこんな状態だと腹がたってパニクッっていたかもしれないが今日は意外に冷静に撮り続けることができた。少しは成長したかな、と思う。 特に写真は、光、音などさまざまな制約を乗り越えて、その制約さえも利用して撮るのが本当のプロだと思う。僕はなかなかそこまではいかないが、少しでもそうなれるようになりたいと思っている
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