3・23 告白 (2008/03/24)
久しぶりに韓国鍋を食べに行った。ここの女性オーナーとは10数年来の友達である。知り合った頃は、彼女はまだ学生で、両親の経営するレストランの手伝いをしていた。生まれはブラジルであるが、韓国語も何の不自由もなく使いこなし大学も卒業した優秀な女性である。その後、結婚して彼女も夫とレストランを経営していた。 1年ほど前に 「夫がカラオケをあけることになったの。今度行ってみてよ。招待券をあげるから」と嬉しそうに言ってきた。 「えっ、カラオケ。辞めるように言った方がいいんじゃないの。旦那に女ができる可能性が多いよ」そのときなんとなしに気にかかったので言った。 「彼を信用しているから大丈夫よ」と彼女はちょっと心配そうな顔をしながらも、そんなことは有り得ないという感じで答えた。その言葉を聞いて余計なことをいったかなと反省した。 ここ最近、彼女の対応が愛想悪いので自然に足が遠のいていた。久しぶりに行くと、彼女はさっぱりした顔をし、いつもの対応に戻っていた。支払いカウンターにおいてあるカラオケのチラシを見て、何気なしに「カラオケはどう?」と聞いてみた。 「別れたの」 「えっ?」彼女が何を言っているのか訳が解らなかった。 「別れたの。あなたが、カラオケを辞めさせた方がいいって言ったでしょ。その通りになちゃったの」 「・・・・・」 何も慰めの言葉もいえなかった。いつもとまったく変わらない明るい口調で語られると、いっそう重みを帯びた。ただ、彼女の顔は異様にすがすがしくスッキリしていていた。 10数年間知り合いではあったが、ちょっとした世間話をするくらいの客とレストランの主人という単なる関係であったので、彼女がこんなことを話してきたのは驚いた。いつも明るい彼女が好きだっただけに、こんな話は聞きたくなかったというのが僕の本音である。しかし、彼女はずっとこのことを僕に話したかったような気がする。僕に告白することによってひとつの区切りをつけたかったような気がする。
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