移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
5・13 T

5・13 T (2008/05/14)  あれはもう何年前のことだろう。多分12、13年前だったと思う。Tというリベルダージにあるスナック? に連れて行ってもらってぶっとんだ。50過ぎぐらいのミニラ(ゴジラの息子)のような女性や、背の高いひょろりとしたカマキリのような女性が居て「ねえ~ん、ビール飲んでいい?」とか「一緒に踊らない」とか、聞いてくるのである。若い女性に誘われても踊りは断るから、当然断った。当時のイメージがずっと残っていて化け物屋敷のような所だと思っていた。店の前を通り過ぎるたびにどうして、この店がまだ続いているのか不思議でたまらなかった。コロニアには、この手のお店が好きなおじさんも多いのだな、と思っていた。
 つい先日お世話になっている方にこのTに連れて行かれて、再びびっくりした。
「もう、この店も随分長いですね。どれくらいですか?」
 ほのかに上品な感じの色気が漂う、もう大分御年の行かれたママさんに尋ねると「そうね、もう20年いじょうかしら」と東北弁の訛がかすかにある言葉が返ってきた。できた当時から店はほとんど変わっていないらしい。まるで日本の古い東北の家にいるような、時間が止まっているような、しっとりと落ち着いた雰囲気があった。今までTが続いていたことを納得した。日本の古い家にいるような落ち着いた雰囲気を味わえるのだ。こんな店なら、独りで飲みたくなったら来てもいいな、と感じた。
 昔は、リベルダーデにもこの手のお店がたくさんあったが、出稼ぎと中国人、韓国人の流入とともに消えていき、今や残るのはこの店だけである。そういう意味においてもこの店はリベルダーデの歴史の一つでもある。
 2杯のウイスキーを飲み干し、また、来よう、そう思った。

 
 


前のページへ / 上へ / 次のページへ

楮佐古晶章 :  
E-mail: Click here
© Copyright 2024 楮佐古晶章. All rights reserved.