5・21 いちおう (2008/05/22)
「楮佐古さんは、いちおうフォトジャーナリストですか」 ほとんど何の付き合いもない青年から突然訊かれた。 一緒にいた0さんがその言い方を失礼に思ったのか「いちおうね」と反復しながら軽く笑った。たぶん、その青年もポロリと出た言葉だろうし、ほとんど知らない人間だから気にもとめようとは思わなかった。 「本当は、フォトルポライターっていうことにしているんだけど、とてもルポなんか書けないんで、やっぱりいちおうフォトジャーナリストかな~」 考えて見れば、書いたり、写真をとったりする仕事を始めてもう随分になる。最初はオーパという邦字誌に入り、記事を書き編集をやった。いい写真が撮れたときに、ときどきグラビアにも載せてもらえるようになり、少しずつ写真の比重がましていった。編集長はかなり適当な人で、毎月の企画もほとんどなく、面白い記事や出来事があればそれを載せていくという感じであった。そのおかげで、僕も自由に記事を書かせてもらえたし、写真もすき放題撮った。そんなヘンチクリンな雑誌ではあったが、未だにオーパは面白かったと言ってくれる人もいる。多分自分たちが面白がりながら作っていたからその雰囲気が雑誌にも出ていたのだろう。 その後、この雑誌はブンバと名前を替え、1年ほどして僕は独立した。何とかなるだろうと思っていたのだが、そんな生易しいものではなく、最初の1,2年はバスに乗るお金もないこともあった。このサイトの管理人の櫻田さんにサイトを作ってみませんか、と勧められ、MINHA VIDAを作った。それがキッカケになり、少しずつ日本から仕事がきはじめ、知人から日本の仕事を紹介してもらったりしながら、新聞の連載や、雑誌の取材の仕事を頂きながら、細々となんとか今までやってこれた。独立して7年ほどであるから、自分でも今までこれだけで生きてこれたことは誉めてやりたいと思う。しかし、技術的にも実力的にも、まだ「いちおう」である。これだけ長くやっていて、まだ、いちおうということは自分でも情けない限りである。写真の方は、プロとしてそれなりに認めてもらえる部分までいったと思う。でも、写真だけでは、なかなか仕事はこない。もうすこし頑張って「いちおう」ではなくて、写真と書き物の仕事をしているとはっきりいえるようになりたいし、言ってもらえるようになりたいものである。
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