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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2020/07/06)
7・10 持ち込みⅡ

7・10 持ち込みⅡ (2008/07/27)  とりあえず、ブラジルで作った「MINHA VIDA」の写真集を見せる。彼は仕方なさそうに1枚、1枚ページを繰っていく。見終えて、大きくため息をつき再びめくり始める。いかにも、なんとか断る糸口を探そうとしているのがよく解る。彼の考えいる事が手に取るように解ったので、あえて何もいわなかった。
 再び大きなため息を2度つき、初めから本を見直す。1枚目で手が止まった。一瞬嬉しそうに目が輝いた。
「自分史って最初に書いてありますけど、僕は、入っていけないんですよね。間口が狭いんですよね。多分、受け入れる人が少ないでしょうから、本として出してもビジネスにならないでしょうね」
 やっと断る切り口をみつけ、こんなムサイ男から解放されると思ってか、先ほどのむすっとした顔から、四角い顔の青年は時折笑顔さえ見せるようになった。
 こんな、大して経験もない、自分は有名出版社に働いているんだゾウ的、男に何がわかる。ぐっと奥歯に力が入った。
もう何もいうことはなかったし、言いたくもなかった。「そうですか。わかりました」とあっさり引き下がった。いつかみかえしたる! そう思いながら、ゆっくりと階段を下りた。去年したニコンサロンの展示会では、「久しぶりにいい写真展を見せてもらった」とか「映画を見ているようで楽しめた」と多くの人に結構評判が良かった。もし、これらの人の言葉がなかったら、立ち直れないぐらいショックを受けていたかもしれない。嫌な役目をおおせつかった青年に腹を立ててもしょうがないのだが、帰りの列車の中ではずっと、その青年の言葉が腹立たしかった。
 しかし、よくよく考えてみれば彼のいうことにも一理ある。本が売れるようにするには、もう少し僕の名前が出るように積極的に働きかけていかなければならない。それにはどうするか・・・、難しいところである。


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