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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2020/10/18)
8・1 テント

8・1 テント (2008/08/03)  日本から帰って、時間があったら、どこかに連れて行ってやる、という約束を息子にしていた。彼はその約束をしっかり覚えていて、「何処かへ連れて行ってくれると言ったよね」と遠慮がちに切り出してきた。体調がいまいちだったこともあり、忘れていたらそのままシカトするつもりだったのだが、覚えているなら仕方がない。
 さて、何処へ連れて行ってやろうか、日本で思った以上にお金がいったから、お金をあまりかけずに近場でどこかにないものか? 郊外にある知人の家のことが思い浮かんだ。小さなサッカー場、テニスコートまである大きな家であるから、最初にブラジルに来たときに持ってきたテントもここなら張れる。
 テントで過ごすと言っても息子はピンとこないようであまりうれしそうな様子でない。母親は心配して、「彼は風邪をひきやすいのに、どうしてテントなんかで寝るの。月曜から学校が始まるのに、病気になったらどうするの!」と大反対である。そんな彼らを無視してテントで過ごすことを決行することを決めた。 
 20年前に買ったテントは、少々問題があったが、使えないことはなかった。このテントを担いで知床や大雪などに行ったものである。その頃のことが思い出され感慨深い。木屑がテントの中に残っていてタイムカプセルを発見したように懐かしかった。ブラジルにきてこれが初めての使用である。もう少し彼は喜ぶかと思ったが、それほどでもない。ロマンがない奴だとがっかりしながら、テントを張る。十分使える、これからもっと使おう! ただブラジルでは泥棒が危なっかしくて、何処にでも張るわけにはいかない。数年前にも、山でキャンプをしていたカップルが襲われて殺された事件があった。猛獣よりも人間が怖いのだ。
 その晩はすっかり知人と盛り上がり、家でワインを飲みすぎてテントで寝るのが面倒臭くなった。外は冷え込み始めている。
「エドアルドのためにきたんでしょ。彼は待っているわよ」と息子のことを気遣って奥さんが教えてくれた。そうだ、そうだ、すっかり忘れかけていた。
 息子とともにテントに潜り込む。テントの暗闇の中で初めてのテントと寝袋のせいか息子は寝づらいようであったが、僕はすっかりいい気分にできあがっていたので背中に土のゴツゴツしか感じながら、あっという間に深い眠気に襲われた。


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