9・6 ガリーニャ(鶏) (2008/09/07)
「妹は最近ガリーニャなのよね」 ちょっと怒ったように、日系人のアミーガ(友達)が言った。 「えっ、何ガリーニャ?」 一瞬わからなかったが、この隠語の意味を思い出した。鶏はあっちこっちつつくようにしてエサをついばむ。それにひっかけて、数人の男や女と浮気をする人間をそう呼ぶのだ。 「それも、相手の男は、昔、私の付き合いのあった男なの。つい最近も別れた、娘の父親と飲みにいったらしくて、今月はまだ毎月の養育費が振り込まれてないの! 全然しっとはないのだけど、もしそのおかげ振り込まれてないのなら腹が立つわ!」 「うーん・・・・」 なんと言ってよいものやら、言葉が見つからなかった。 「もう、3ヶ月も払い込まれてないから、訴えてやる」 「でも、訴えたら、彼は監獄に入れられるんだろう。訴えたら、もうお金が入らなくなるよ。とりあえずは、警告をしてそれでも払わなかったらにすれば」 ブラジルでは、別れた妻に養育費を払わなければ、その罰則は非常に厳しく、監獄行きとなる。 彼のことは全然しらないし、彼を助ける筋合いは全然ないのだが、ブラジルではゴタゴタをおこすと弁護士代やらなにやら大金が飛んでいく。警告なしに訴えて、彼が監獄に入れば、彼女もわずかとはいえどもお金が入らなくなるし、お互いに損である。まったく関係のない弁護士なんかにお金を儲けさせるのはアホらしい。今はお互いの了承があれば簡単に別れられるようだが、以前は離婚に際しては弁護士が財産の数パーセントを取っていた。とにかくブラジルの弁護士は悪徳が多い。弁護士といって威張っている奴が多いが、一番下衆の職業だと僕は思っている。 「でも、彼は私の電話にでないのよ」 「じゃあメッセージにでも入れとけばいい。それでも払わなければ訴えればいい」 「そうね、じゃあ、そうするわ」 苦いエスプレッソコーヒーの残りを一気に飲み干して彼女はちょっと顔をしかめた。 「じゃあー、またね」 「結果はしらせてんね!」 彼女は軽く頷いて足早ににカフェテリアを出ていった。
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