10・10 泣き声 (2008/10/10)
犬の散歩をしていると、「ウエーン、ウエーン」という子供のような泣き声が後ろから聞こえた。振り向くと、歩道の隅に一人の大柄な黒人がうずくまっていた。男のようにも見えるが、よく見ると女のようである。その泣き声はなんとも切なく、聞いていると悲しくなった。もう、行き詰ってどうしようもなく、何もかもに絶望してしまった泣き方である。彼女は物乞いをするでもなく、ただただ泣いていた。ポケットに小銭が入ってないか探るが、散歩用の服なのでコインの1枚もなかった。結局なにもできなかった。 彼女の悲しげな泣き声がずっと耳に残っていた。それを追い払うには犬たちと走るしかなかった。
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