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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2020/09/23)
10・20 1本の電話

10・20 1本の電話 (2008/10/20)  夏時間になった。1時間損をしたような気がする。たかが1時間されど1時間で、結構辛い。以前の7時におきても、夏時間だから8時である。極楽トンボのような生活をしている身でも辛いのだから、毎日朝早く通勤している人はさぞかし大変だろう。
 犬の散歩にいくために建物をでようとした。門番を見ると、いない。入り口を掃き掃除している。うちの建物は犬、猫、モノの搬出搬入の入り口は別口で裏にあり、リモコンでドアを開けてもらって出入りする規則になっている。
 仕方がないので、前の出口から犬を連れて出ると、
「アミーゴ、ここからは出ちゃだめだよ」と門番が声をかけていた。
「だって、居ないじゃないか」とちょっとムッとして僕。
「掃除をしていたから・・・」
 ぐぐっと怒りを抑えながら
「だから、ここから出てきたんだよ。ちゃんと、いつもは裏からでてるでしょ!」 
 さらに門番は何かいいたそうであったが、僕の目がだんだん釣りあがり始めたのを察して、一瞬、困ったような顔をして「解ったよ、ありがとう」と言って引き下がった。
 散歩をしながら、どす黒い雲のように湧き上がった怒りをこれ以上広がらないようになんとかなだめようとした。他の門番は入り口にゴミがあっても拾うともしないし、自分の仕事以外はしない。それがこの若い門番は自分から進んで掃き掃除をしているから大した奴だ。それに、一応門番としては、使わないでくれ、というのが義務といえば義務である。ただ、彼がそれで終わっていれば、僕も何言わなかったと思う。ああだ、こうだ、と門番の権力を使いそうになったので怒りかけたのである。しかし、僕が柔らかく「解ったよ」といえばそれで済んでいた問題でかもしれない。と少し反省。
 しかし、アミーゴ(友達)でもない奴に気軽にアミーゴと呼んで欲しくないし、彼の給料の数パーセントかもしれないが、僕は払っているわけである。僕の顔見知りの門番はセニョールと呼ぶか僕の名前を呼ぶ。ブラジルでは何と呼んでいいかわからないときには無難にアミーゴと呼ぶのが普通であるが、僕は嫌いなのである。しかし、しかし、彼は普通の言い方をしているだけだし・・・、そんなことを考えながら犬を引いていく。
 融通がきかない、さらりと受け流すことができない、がちがちに角張った自分がイヤになる。最近特にこの傾向が強いように感じる。
 せっかく散歩をしたのに嫌な気分でエレベーターを待っていると、勝重さんから電話があった。
「おはようございます。瀬戸内寂聴の「いよよ華やぐ」の下を送ってくれる・・・・・・」彼女の明るい深みのある声が徐々に暗い気持ちを吹き飛ばしてくれた。彼女の電話で、暗くなりかけていた気持ちが晴れた。


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