1・4 たら (2009/01/05)
スーパーで買った、網目メロンを食べることをすっかり忘れていた。ところどころ腐りはじめていたが、割ってみるとまだ大丈夫そうである。 メロンを食べながら苦い思い出を思い出した。 遠い親戚に、当時、結構有名な売れっ子カメラマンがいて、どうしてか解らないがその家に行った。もしかしたら、その世界に入るきっかけができたら、という甘い希望が僕の中にあったのかもしれない。最初は、叔母さんも、助手にしてもらったら、などと言ってくれていた。オールドパーが出され、ついつい飲みすぎてしまい、記憶が飛んだ。朝起きるとその晩の記憶は全くなく、そのカメラマンの印象さえ何もなかった。随分失礼なことをほざいたらしく、叔母さんの怒り心頭の様子に驚いた。北海道に帰って、お詫びに夕張メロンを送ったが、着いたという連絡さえもこなかった。よっぽど頭にきていたのだろう。 もし、あのとき大人しく飲んでいたら、僕も少しは日本で名前が世の中に出るようなカメラマンになっていたかもしれない。そう思うと少し残念な気がしないでもないが、人一倍軟弱な僕には、多分、人の弟子になって続けるなんてことは無理だっただろう。 遠い昔を思い出しながら、熟れて甘くなったメロンをがぶりと齧った。そんなことを考えていると、最近観た映画「クウフーパンダ(ブラジル名)」のなかで亀のお師匠が言った「物事に、偶然はないのだよ」という言葉を思い出した。そう、やっぱり「たら」は有り得ないのだ。
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