移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
5・8 アウグスタ通りの男

5・8 アウグスタ通りの男 (2010/05/09) 今日は午後からどんよりと曇り寒々とした感じが見かけはするが、暑い。バスに乗ると、空気がこもり暑くてたまらない。
 知人に本をあげようと、パウリスタの多分サンパウロでは一番大きな本屋に向かう。高級ブティック街で有名なジャルジンパウリスタをセントロ方向にアウグスタ通りを上っていると、一人の路上生活者らしき黒人のおじさんが、木にもたれかかってぼーっとしていた。その表情は、まるで精神がどこかに行っているようで、呆けていた。ちょっと異様なその表情に誘われて写真を撮ろうかとカバンの中のカメラを握った。
 おじさんの顔から、視線を落とし下半身にある手を見て思わず唖然とした。手には剥き出しになった水道管ほどのペニスが握られていたのだ。その先からは、つーっと粘り気のある液体が糸を引いていた。もしかしたら、マスターベーションをしていたのかもしれない。だから、抜けたような表情をしていたのか・・・。その表情にばかり気が行っていたのでなかなか気付かなかった。 
 さすがに写真は撮れず、彼の横をそのまま通り過ぎた。撮ればよかった、と軽い後悔を残しながら・・・。でも、人の嫌がる写真や、恥ずかしい写真は基本的には撮らないようにしているし、撮ったところで何にも使えない。でも、あの呆けた表情は良かった。こんな場所で、それも公衆の目前でマスターベションするなんて、普通の頭では考えられない。気が触れてしまっているのだろう。何かで頭がぼけても性の部分の感覚は鋭利に残っているという文を何かで読んだような覚えがある。本能のみが残り快感を追求していく姿を見て悲しくなった。どうして彼はそこまで追い込まれてしまったのだろう。
 本屋は人であふれていた。ブラジル人は一般的に本を読む習慣が少ないと思っていただけに、この盛況ぶりには驚いた。階段状の、本を読む場所があったり、たくさんの椅子が置かれてあったり、気軽に本を見ることができる店内には文化的な雰囲気が漂っていた。この本屋には何度かきたことがあったが週日ばかりで、これほど人が入っているのを初めてみた。店内の様子を写真に撮りたくてしょうがなかったが、数人の守衛もいるようだし、もっているのはちょっと大き目の一眼レフだったので、後で文句を言われたりするのが嫌だったのであきらめた。やっぱりコンパクトデジカメも持ち歩くべきだとつくづく思った。
 夕方、大雨になりアウグスタ通りの坂道は川のようになってしまった。あのおじさんの精液もきれいさっぱり流されたことだろう。今も彼は呆けた顔をしてどこかで液体をドクドクと吐き出し続けているかもしれない。  


前のページへ / 上へ / 次のページへ

楮佐古晶章 :  
E-mail: Click here
© Copyright 2024 楮佐古晶章. All rights reserved.