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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
5・11 11年

5・11 11年 (2010/05/12) 夜7時、繁華街のネオンがちらほらと点き始めたアウグスタ通りを歩く。以前は、夜の街を毎日のように徘徊したものだ。ドキドキワクワク、何が起こるか分からない、どんな出会いが待ち受けているかわからないと言った、以前夜の街を歩くと感じた感覚がすこし蘇ってきた。
 どうして、最近夜の街を歩かなくなったのだろう? 自分でもふと疑問に思えてきたのでちょっと考えてみた。一番大きな理由は遊び仲間の友人が日本に帰ってしまったこと、歳をとり、夜一人で夜の街に出るのが億劫になってきたことがあげられる。さらに、街自体の治安が悪くなったこと、夜の街がどんどん寂れていったこと、街で働く女性たちも金金でつまらなくなってきたことなどが主な理由である。身体を壊してしまい、ほとんど酒を飲まなくなったことなどもある。
 そんなことを考えながら、夜の面白かった時代に思いをはせ、アウグスタ通りをどんどん下って行った。と突然「アキノリ!」という男の声が後ろからした。いったい誰だ? 僕の名前を呼ぶなんて。それも男が! 振り向くと、ナイトクラブの前の植木の鉢に腰をおろして店があくのを待っている初老にさしかかった男がいた。
「おーい、俺だよ、俺。以前は友達一緒にいつも店に来てくれてたよな」かすかに見覚えがあるような気もするが、ほとんど覚えていない。握手をしながら思い出す。「へ~、まだ働いていたんだ」「もう、この店で11年さ」
この店も今やすっかり寂れてしまい、ほとんど足を運ぶことがなかった。
もう11年か。一昔以上である。あの頃も金はなかったが、昼夜関係なく野良犬のようにいろんな所を歩きまわっていた。彼と話していると、あの頃にタイムスリップしていくような不思議な気分になった。
「また、今度きてくれよ」「またね」
 今度ゆっくり夜の街を、一人で徘徊してみよう。


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