5・20 講演会と怪電話 (2010/05/22)
僕の好きな、アメリカ人カメラマン、スティーブ・マーキュリーが講演会をやることを知って会場のMISに行った。その人柄と彼の考え方に興味があったのでかなり楽しみにしていた。無料で1時間前に170人限定でチケットを配り始めるとサイトのインフォメーションには書いてあった。 ブラジル人は無料となると目ざとく参加する人がたくさんいるから、少々危ないかなとも思ったが、カメラマンの講演会だし1時間前に行けば大丈夫だろうと思っていた。ちょうど1時間前の6時に会場につくと、すでに長い列ができていた。それでも、まあ大丈夫だろうとタカをくくっていた。自称、他称のカメラマンが多いのか結構カメラを肩や首からぶら下げている人が多い。僕のすぐ後ろの金髪の女性は写真に興味があるからきた、と言う。すぐ前のカップルは目の前でちゅっちゅといちゃついている。男性は、肌は白いが黒人の血が混じっているのか、分厚いたらこのような唇をしていて、口がでかいうえに、しまりがない、なんとも、不快を催す顔である。その男の連れが意外にかわいいので妙に腹立たしい。そんなことを思いながらじっと開場になるのを待つ。 気温はどんどんさがるが、一向に入場の気配がない。7時をすぎ、8時をすぎた。いったい主催者は何を考えているのだろうか。だんだん腹立たしくなってきた。8時を少し過ぎた頃、列が動き始めた。主催者らしき男がやってきて、これ以降の人ははいれませんという。僕のほんの数メートル先である。整理券でも配ればいいのに、最後の最後まで待たせておいてダメだとは! さすがブラジル人! 何も考えていない。しかし、皆文句をいわない。もしこれが日本だったら、主催者はつるしあげをくっただろう。「会場にははいれませんが、ロビーで、テレビで講演会の様子を見ることはできます」という。2時間半も待ったのだからせめて、テレビでも見ようという気になった。 長い主催者の挨拶のあと、スティーブが現れた。写真で知っている彼よりずっと老けた感じがする。もっと鋭い目つきをしているかと思ったが意外に愛きょうのある目が印象的であった。彼はもちろん英語で話し始めた。なんとか理解しようと集中していると、突然、ポルトガル語が上から覆いかぶせるように流れ始めた。非常に聞きづらくただの雑音にしか聞こえない。その瞬間、ロビーの人間からアーっという大きなため息が漏れた。同時通訳をやっているつもりなのだろう。聞く方からすればただの雑音しかない。僕の語学力では英語もポ語もほとんど聞きとることができなかった。最低の講演会である。同時通訳が始まると、テレビを見ていた半分ちかくの人が立ちあがって帰っていってしまった。 ずっといても仕方がないので僕も帰ることにした。ちょうどその時、携帯が鳴った。息子からである。 「車が当たって。電話会社からメッセージがあったんだ! 今から電話をかけるんだ。でも携帯からではだめなんだって」 「応募したの? 応募もしないのに当選したって! そんなのウソにきまっているよ」と僕。「でもかけてみるよ」 だいたいなんで携帯からではだめなんだ。なんかおかしいなと思いながら電話を切った。 家に帰って話しを聞くと、母親が息子に代わって電話をしたらしい。 「電話をかけると、家は自分の持ち物か、なんて聞いてくるし、IDばんごうなんか聞いてくるの。そんなこと聞いてくるなんておかしいじゃない。すぐ、切って警察に電話したの。そしたら、多分、犯罪者がかけてきているんじゃないかっていうの。今、個人情報を盗んで使う犯罪が増えているんだって! 変な電話がかかってきたらすぐ切ってね」 今日は最後までぱっとしない日であった。
 | 講演会をテレビで見る人々。 しかし、ブラジル人の準備のお粗末さにはあきれる。無料の催しで満足できたためしはほとんどない。友人のブラジル人に話すと、「そんなのは普通だよ」とあっさり言われた |
|
|