6・3 大野一雄氏の思いで (2010/06/05)
旅行から帰ってきて、サイトのニュースを見ていると、あの舞踏家の大野一雄氏が亡くなった、という記事が目に飛び込んできた。ショックであった。 92年に氏がブラジルを訪れた際に、記者会見と舞台が行われた。そのころ、邦字雑誌社の記者兼カメラマンをしていた僕は、ほとんど何も知らずに参加していた。記者会見では、宇宙からのエネルギーのことを話し始め、そのエネルギーによって自分の身体はつき動かされるのだ、というようなことを語った。途中で時間がなくなり、係の人が「時間です」、と告げたほど熱心に話されたような覚えがある。その壮大な話しには非常に感銘を受けた。 舞台はファインダーを通してずっと見た。普段は車いすや、杖をついてやっと歩いていた感じだったのに、舞台では、まるで宇宙からのエネルギーを注入されたようになり、同一人物とはとても思えない颯爽とした動きであった。時に色っぽい大人の女性になり、時にあどけない純粋な子供になり、その変幻自在の動きと表情に魅了された。 氏の会見と舞台を見てから、舞踏に興味を持ち、よく見るようになった。当時は、山海塾をはじめ、杏子、田中泯、白虎社、室伏鴻など、多くの舞踏家がブラジルを訪れた時でもあった。踊りを見て、踊り手がどういうメッセージを伝えたいのかなんてことはほとんど解らなかったし深く考えもしなかったが、踊り手の精神と肉体のストイックな表現と発せられるエネルギーは、カメラのファインダーを通してしっかりとフィルムと僕の網膜に焼き付けられた。 大野一雄氏は踊りを通して宇宙のエネルギーを人々に運んできていたのだと思う。今、氏の魂は大宇宙のエネルギーの中に帰っていったのだ。 心から、御苦労さまでした、と言いたい。
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