10・21 意地悪 (2010/10/22)
今日は、魚の買出しの日。20分近く歩いて、メルカードムニンシパル(市営市場)まで行くのは非常に面倒ではあるが、毎朝焼いて食べている魚がないのは困る。散歩で疲れた身体を叱咤しながら出かける。朝30分の散歩は、最近スピードがあがりほぼ駆けている状態で歩くため、結構疲れるのだ。連れて歩く犬たちは、足の短いダックスフンドだからもう走っている。彼らも疲れるようで帰りつくとそのままぐったり寝てしまう。 カツオ1匹、いわし1キロ、イシモチ1匹を買い、計42レアル(2100円)ちょっと買いすぎてしまった。そんなことを思いながら、広場を通り抜けていると、顔のツルリとした日系人のおじさんが「コーヒー代に小銭くれないかね。アミーゴ」と言って、どんどん近寄ってきた。サンパウロでは泥棒が多いので、僕は歩いているときにしらない人が近づいて来ると、ある一定の距離以上は近寄せない。もちろん、自分も不用意には人には近づかない。一度、ジャルジンパウリスタで道を聞こうと、おばさんに近づくと、彼女は恐れおののき、後ずさりをしているうちに危うくこけそうになった。そのとき、不用意に人に近づくモノではないことを悟った。 そのおじさんの顔を、僕は覚えていた。彼が僕のことを覚えているのか知らないが、彼は、僕の顔を見ると、いつも近づいてきてお金をせびる。60歳ほどのおじさんで服装からすると路上生活をしているのだろう。何回かはお金をあげたような覚えがある。 しかし、今日は疲れていることもあり、目ざとく僕を見つけ、ニタニタ笑みを浮かべながら近づいてくるおじさんに強い嫌悪感を抱いた。「無いよ」ボスッとつぶやくようにいうとおじさんは、「ディスクーペ(ごめん)」と言ってあっさり遠ざかっていった。その言葉を聴いてハッとした。ポケットを探ると、1レアル硬貨があった。このおじさんに、意地悪をしたような、悪いことをしたような、後味がわるかった。あげればよかった、と後悔しながら、一層重くなった足で残りの道を歩いた。次回おじさんが来たときはやさしい気持ちであげよう。  | メルカードの乾物屋では、生ハムの塊やサラミが店の前につられている。これだけたくさんつられていると、なんとなくおいしそうに見えて、思わず買いたくなるから不思議だ |
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