8・12 ギター演奏家、ジョージ (2011/08/13)
サキソフォン吹きのハファエルに約束していた写真を渡そうと、彼がいつも吹いている場所に向かった。いつもは、サキソフォンの太い音が、ビルディング街に響き渡っているが、50m近くに来ても聞こえない。もしやいないのでは? と思いながら20mほどまで近づいた。やっぱり、彼の姿はなかった。 「今日はいると言っていたのに・・・・」せっかく大きめに伸ばした写真を持ってきたのに残念であった。せっかくきたのだから、と思い、彼がいつも演奏している場所に行くと、そのちょうどまん前で、スピーカーを置いて店の宣伝をしていた。「このせいだったのか・・・。」もしかしたら、この辺にいるかもしれない。雑踏の中で、耳を澄ましてサキソフォンの音を探したが、いっこうに聞こえて来ない。諦めて、大通りを抜けて帰ろうとするとちょうど目の前に、ハファエルがギターを背負った小柄なおじさんと話しているのを発見した。このおじさんも、リベルダーデやセントロで演奏している姿を時折見かけていた。写真を撮らせてもらおう、と何度か声をかけようとしたが、いつもタイミングが悪く、その機を逸していた。 どうやら、いつもおじさんが演奏している場所で、ハファエルが演奏していたので、話していたようだ。「じゃー僕はもう少し先で演奏するから・・・」二人の話が終わりかけた頃、ハファエルに声をかけて写真を渡した。「彼は、ルア(通り)の演奏者の写真を撮っているんだよ」ハファエルが僕のことを紹介してくれた。このチャンスに乗じて、おじさんに写真を撮らせてくれ、と頼むと気軽にOKしてくれた。 「あんたの写真、俺も気に入ったよ。いいときに撮ってくれ。ジョージだよ」黒のサングラスに黒のスーツ。服は少しよれてはいるがなかなかキマっている。年齢は60歳くらいだろうか。 「ちょっと待ってくれ。毎日6時間以上歌っているから、ノドに問題があって」そういいながら、ジョージは小さなカバンからタッパーを取り出して中にあるレモンを半分に切り、絞って飲んだ。 聞くと、稼ぎが多い日には100レアル(5000円)ほどもあるらしい。「リベルダーデ(東洋人街)でも演奏しているんだけど、許可がないとダメだといわれちゃってね。だから人が多いプラサ(広場)ではできないんだ」道で演奏して、寄付をもらうような人でさえも排除しようと言うのはひどい話である。聞いている僕の方が腹立たしく思ったが、 「あそこは、週末たくさん人が集まるから、演奏すると歩行者の邪魔になるらしんだよね。だからちょっと入った横の通りでやっているよ」怒るでもなく淡々とジョージは話してくれた。「もう、俺のファンもいてね、行くといつも募金箱にお金を入れてくれる女性もいるんだ!」そういって顔をほころばせた。 準備ができ、軽いステップを踏みながら、演奏しはじめた。これ1本で食ってきた、長年積み重ねてきたある種の凄みと言っていいかもしれない。いい出会いができた。しばらく彼を追って写真を撮りたくなった。
 | サイトに載せる許可を取っていなかったのでとりあえず後ろ姿だけ。演奏の準備をするジョージ |
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