12・10 肉屋のバイアグラ (2011/12/11)
クリスマスを前にして、問屋街の25・デ・マルソは買い物客であふれている。朝の雨が降ったりやんだりの天気にもかかわらず、この人出だから午後になると、もっと凄いのだろう。人の間を縫いながらメルカードを目指す。 メルカードも、年末の料理用の食材を買い込みにきた人々で一杯である。こういう年末の慌しさは、日本もブラジルもおなじなのだ。旅でぼーっとしていた頭が, さらに人ごみにぼーっとする。今日は魚が入荷する日ではないためか、いまいち新鮮な魚がない。結局、刺身で食べれそうな魚がなにもないので、アンショーバ(マスに姿が似ていることから、こちらの日系人達はマスと呼んでいる。日本では見たことがない魚である。焼くとおいしい)を購入。これではまた、魚が入荷する火曜日にこなくてはならない。 馴染みの肉屋に行って、3キロの牛肉と1キロの牛ミンチを購入。しめて58レアル(2900円)。年末になるといろんなモノが値あがるので、今日はちょっと大目に買ったのだ。いつも冷凍にしてカレーや、野菜炒めに使って少しずつ食べている。これだけ買えば、2ヶ月はもつだろう。 オーナーと話しているうちに、マラジョ島のバッファローの話から、マラジョ島の天然バイアグラ、ツルーの話になった。 「うちにも天然バイアグラはあるよ!」そう言って、従業員にフックでぶら下がっている牛の足から肉をそぎ落とさせると、骨を受け取り電動鋸でまっぷたつに切った。小さなスプーンを使って、切り口からまるで魚の卵のような形状の、少しオレンジがかった黄色い骨髄を白い骨からサランラップの上にトロリとすべりおとした。さらにもう1本の足から同様に骨髄をとりだす。サランラップの上から太い根っこのような指でグチグチと押しつぶし、軽く塩を振る。見た目にはとてもおいしそうとはいえない。むしろ、ちょっとね~、と言いたくなるようなシロモノだ。肉屋のボックスからオーナーは出ると、すぐ近くのバール(軽食屋)に太った身体を重そうにゆすりながら歩いていった。何しに行ったのだろう?? と思っていると、1個のパンを右手に持って帰ってきた。どうするのだろう??? パンにさっと包丁を入れて2つにすると、先ほどの骨髄に押し付け始めた。むむ?むむ?さらに、このパンを4等分し、そのうちの一つを僕にくれ、残りを自分に、そして従業員に渡した。熊の内臓をはじめ、いろんなゲテモノを食べてきたが、牛の足の骨髄を食べるのは初めてである。 狂牛病や、日本で問題になった生肉ことが頭をよぎる。しかし、ここまで来たら、断るわけにもいかない。腹を決めて口に入れると、濃厚なバターのようなまったりとした味が広がった。イケル! いくらでも食べたくなるような味ではないが、結構イケルのである。「これを食べると精力がつくよ。でも、勿論新鮮なモノじゃないとだめだけどね。配達をする彼なんかしょっちゅう食べているよ」 ここのオーナーはアラブ系の人だから、アラブの方では骨髄を同じようにして食べるのかもしれない。 話は前後しますが、マラジョ島の話は続きます。
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