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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
3・13 コミュニダーデ

3・13 コミュニダーデ (2012/03/14) ファベーラ(=貧民街、最近はコミュニダーデ=コミュニティと呼ばれるようになった)に行ったのは、ちょうど去年の今頃のような気がする。バタバタと旅行が多くなり、すっかり足が遠のいていた。
 いろんなモノが山積みになった机の上でみつけた1年前の写真をみているうちに急にまた行きたくなった。早速、ボランティアで彼らの世話を40年以上も続けているヨランダさんに連れて行ってくれるよう頼んで、今日久方ぶりにコミュニダーデを訪問した。
 コミュニダーデの人の入れ替わりは激しい。もしかしたら、知らないひとばかりになっているかもしれない、と心配しつつ向かっていると、以前いろいろ世話してくれたコミュニダーデの住人ネイリーとばったりあった。すっかり太ってしまい、パチパチのジーンズからはお腹の肉がはみ出すほどになっていた。コミュニダーデの住人には、不思議に太った人が多い。貧しい生活をしていると痩せてガリガリだと思うかもしれない。ブラジルの場合は、政府の保護政策のおかげや、各国のボランティアからの寄付などのおかげでなんとかかんとか食べていくことは可能なのである。しかし、バランスの取れた食事とは言いがたく、マカロン(スパゲティ)に米、パン、フェジョンにわずかばかりの肉といった、お腹が張る偏ったモノばかり食べるのでどんどん太っていってしまうのである。逆に、お金持ちほど痩せた均整のとれた身体をした人が多い。バランスの取れた食事をし、毎日トレーニングセンターに通って汗を流して、健康に気をつける人が多いからだ。
 ネイリーは「今から、子供を学校にに迎えにいくの。他の娘たちは家にいると思うからよってみて」と言って、重たそうに身体を揺らしながら行ってしまった。
 コミュニダーデに行くと、知らない顔の男性ばかりで、ちょっと雰囲気が悪い。彼らも見知らぬ僕らに対して「なんだこいつらは?」と言った鋭い視線を送ってくる。多くのコミュニダーデには、麻薬の組織が入り込んでいるから、見知らぬ人に対しては、異常に警戒するのである。だから、単なる好奇心でノコノコ、一人でコミュニダーデに行くなんてことは絶対やめた方がいい。見知らぬ顔が一向に見えないので、ちょっと危ない、と感じたがヨランダさんも同様に感じていたらしく、見覚えのある6歳ほどの女の子が現れたときには二人でほっとした。
「あっ、おばちゃん!」女の子が声をかけてきた。「お母さんは元気?」とヨランダさんが聞くと、彼女はウンとうなずき手を引いて家まで連れて行ってくれた。コミュニダーデの雰囲気はほとんど変わらないが、以前のベニヤや廃材を寄せ集めて作られていた掘っ立て小屋は、ブロックの壁になり、何軒かの小屋は2階立ての家になっていた。
 女の子が連れて行ってくれた家で、去年撮った写真を渡すと、非常に喜んでくれた。さすがに1年前からすると、子供たちは随分大きくなっていて、誰が誰やら僕にはわからない。かすかな覚えを頼りに写真を渡すと、皆当時を懐かしがって喜んだ。彼らの写真を撮っていて、嬉しいのは、自分の撮りたい写真が撮れたときもうれしいが、写真を渡したときに嬉しそうな彼らの顔を見る時だ。僕たちが写真を持ってきたことを聞きつけて、たくさんの子供たちが集まってきた。また何枚か撮ってあげているうちに、小さな子供を抱いた男性もやってきて写真を撮ってくれという。そうするうちに、男たちの鋭い視線も感じなくなり、また1年前と同じように僕たちを受け入れてくれた事が感じられた。
 次々にやってくる子供たちの写真を撮っているうちに、「やっぱり来てよかった」と心底思った。また1ヶ月後に写真を持ってくるから、と約束して子供たちに手を振って、コミュニダーデを後にした。


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