11・30 密告 (2012/11/30)
セントロの階段や奥まった人目につかない隠れたような所は、ウンコと小便だらけ。今日も清掃人が、放水車の消毒剤入りの水で洗い流している。 ちょうど逆光だったので派手に水しぶきがあたっているところを撮ろうと、一番良いアングルに来るのを構えて待っていると、横に寝ていたストリートチルドレン(僕より大きいのでチルドレンじゃないかもしれない)が「ビデオまわしてる」と清掃人に言いつけた。 清掃人が振り向いて、撮らないでくれ、と手を振った。もちろん無理にとるつもりはさらさらないのでやめた。しかし、うるさい、奴だ・・・。こういう言いつけるような奴がいるから気をつけなくては! とつくづく思う。 路上生活者などの写真を撮っているところを警察に見つけられると、尋問されたり、警察署に連行されることは知っている。特に、僕のような外国人がブラジルの汚点写真を撮ったりすると、ワールドカップ前ということもあり、ひどければカメラを壊されたり、カードを取られたりする可能性が大いにある。そんなことを思いながら歩いていると、100mほど前方の広場で人が遠巻きにして何かを診ていた。なんだろうと思い近づくと、4,5人の警官がヒッピーを取り巻いて何か言っていた。と突然1人の警官が警棒でヒッピーを2度3度殴打した。警棒のぐんなやり曲がった様子から見るとまったく手加減が感じられない。周囲から、やめろ、というような喚声があがる。 一瞬、カメラに手がいき写真を撮ろうかと躊躇した。あまりに突然の殴打だったことと離れすぎていて、肝心な殴打写真は撮れないことは解っていたのでカメラをカバンの中で握り締めただけで終わった。特に女性が多かったが携帯で写真を撮り、その場で発信していた。女性の勇気には感心した。もっとも、見つかっても男性は許されないが、女性なら許される可能性が高いことは彼女らも知っているのだろう。ブラジルは子供や女、老人などの弱い立場の人間に暴力を振るったりすると大変なことになる。それは警察もよくしっている。 殴打された男は背中を丸めて頭を抑えてエビのようになって横たわったままである。ヘタに写真を撮っていると危ないことは解っていた。新聞社などの後ろ盾があればまだしも、何もない身にはやはり近づいて写真を撮る勇気はなかった。ここに来る前の出来事もかすかに頭に残っていたのだと思う。 男がパトカーに乗せられるのを機にその場を離れようとしたときに、通行人の女性が、「あの男よ、オレンジ色のシャツを着た男。携帯で全部撮っていたわ。恥知らず!」ヒステリックに言いながら指をさした。指された男は顔がひきつり、まるで笑っているように表情がゆがんでいた。若い警官が顔をひきつらせながら、その指差された男に向かっていき、携帯をだすように告げている。 なぜ警官が暴力を振るうのか? 何があったのか? 良くわからないが、まったく何もできない男を警棒で思い切り叩く警察の暴力を肯定する、この女性の考え方がわからない。どっちがはず知らずなのか? こういう女性が怖い。
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