1・18 心の通う一瞬 (2013/01/19)
「しばらく診なかったけど、どこか旅行してたのかい」 路上ミュージシャンの友人がひげもじゃの顔を揺らした。 歌っているときには、悲しげな表情しかみせないが、話しているとひょっこりひょうきんな、はにかみを含んだ笑顔が現れる。7歳のときから独学でギターを弾いているという彼は、途中広告代理店で働いたものの、35年ずっとギター1本で暮らしてきた。 「録音しないかと言われててね」ちょっと恥ずかしそうに彼はいう。そんな彼の控えめな所が好きだ。 最初にあった頃は、前歯がなくて、「前歯がないんで恥ずかしくて歌は無いけど、ギターを弾くよ」と言いながらも写真を撮らせてくれた。最近、前歯をいれたそうで、ニーッと笑って見せてくれた。歯と歯の間に少しすきではあるが、立派な真っ白い歯が2本入っていた。 「へー、良かったね」というと、少し自慢そうに、携帯用のスピーカーも見せてくれた。「おお、凄いじゃない」ヒゲ面の中に恥ずかしそうな笑みが篭れる。 彼が作ったという「Tulio Dias Depois do Claror」を歌ってもらい、いつものように数枚の写真を撮り、お礼のお金を置く。 演奏しながら、彼は片目をつぶり、ありがとうの意を示してきた。憂鬱なことが遭っても路上のミュージシャンたちと話し写真を撮っているうちに気分が晴れてくる。 2か月に1回か2回、会話をして歌を聞かせてもらい写真を撮らせてもらうただそれだけの関係だが、心の通う一瞬が心地よい
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