1・23 セ広場の怒 (2013/01/24)
夕暮れのセ広場を歩いていると、ガランカランと、重たそうな金属音が響いた。直径4センチほどの鉄管が回転しながら転がっていく。飛んできた方をみると、いつもいる片足のない路上生活者が投げたことがわかった。ピンガを呑んで、いつも酔っ払い呆けたような赤ら顔をしている彼がそんなことをするとは思いもよらなかった。 もし、通行人に当たれば、十分に傷つける強い力をはらんだ鉄管は地面に落ちても、未だなお力を失うことなくコロコロと転がっている。どうにもならない自分の人生に愛想をつかしてヤケクソで、鉄管を投げたのか? 数秒後、もう1本の鉄管が、上半身を弓のように一杯にそらして投げられた。その強さに驚いた。普段見る彼からは考えられない力がみなぎっていた。鉄管はまるで彼の人生の恨み、怒気の変化となった鉄管は石畳にぶち当たりガランガランと大きな音をたてながらすっとんでいく。危ない、気をつけろ! 誰かが叫んだ。 5m先に立っている警官は知らん顔をしている。普段威張り腐っているだけに、警官のこんな様子を見ると腹立たしい。まるで人々の視線をそらすかのようにおかしな方向を向いた。人々の非難は鉄管を投げた路上生活者から、この小太りの、普段いかにも国家権力を傘にきて威張っていそうな警察官に向けられた。 普段は、大人しく座っているだけの彼に何がおきたのだろうか? 何が突然彼の怒りを増幅させたのだろうか。人生に行き詰った人々が吹きだまるセ広場は、彼の怒り飲み込み、再び普段の静寂を取り戻した。
 | セ広場で布教する人々。いつも多くの人々が聞き入っている |
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