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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
3・13 ファベーラ再びⅠ [画像を表示]

3・13 ファベーラ再びⅠ (2013/03/14) 今日は朝から天気が悪く、どんよりと垂れこんだ灰色の雲からぽつりぽつりと雨が降り始めた。
 バスが待ち合わせの場所に近づくにつれ、赤茶色のレンガの地肌そのままの家が増え、雑多な雰囲気になってきた。午前11時だというのに、道行く人が多い。このあたりに住んでいる人々をきちんと調べたら人口密度は驚くほど多いだろうな、そんなことを思いながら、車窓の外を眺める。普段、人でいっぱいのバスに乗りなれてないせいもあり、つぎはぎだらけの道路でバスが揺れるせいもあり、だんだん気分が悪くなってきた。はやく着くことをいのりながら、揺れるバスに乗り続けること40分、やっと約束の場所についた。
 ファベーラ(貧民街)に来るのは去年の10月以来である。麻薬組織と警察の間に闘争が起こり、ファベーラを根城にする麻薬組織が、見知らぬ人々がファベーラに入るの嫌い、危なくて訪問できなかったのだ。
 ファベーラの入り口で、6歳ほどの女の子が僕の顔を見て、「今日、私の写真を撮ってくれる」と声をかけてくれた。前にどこかで僕が写真を撮ってるのを見たのだろう。ちょっとホッとする。前回、来たときは若者がたむろしていて彼らの横を通り過ぎると、「ファベーラのやつらじゃないぞ」と小声でいいながら、僕らの後をついてきた。振り帰ることなく、急いで一番近い小屋に住む知人の小屋に駆け込んだことがあった。
 今日はこの女の子が目的の家族の家までついてきてくれたので安心だ。幅が70センチほどの迷路のような細い道を抜け、どぶ川のすぐ横を通り、拾ってきた板を継ぎはぎ継ぎはぎ打ち付けたような小屋についた。僕が初めてファベーラに来たとき写真を撮らせてくれた家族だ。
 その頃、16歳だった娘も今は19歳になり小さな子供がいる。一時は家出をし、麻薬にはまり込みセントロあたりで売春をしているという噂を聞いた。子供が生まれて家に帰ってきたそうだ。その彼女がにっこり笑って出迎えてくれた。以前は、どことなく影があった笑顔であったが、子供ができてから影が消えた。優しいいい笑顔だ。この娘とは最初からどことなく意志が通じるような感じがあった。
「うちに来る?」そう言われて彼女の後をついていくと、斜面に半分ずれ落ちそうな小屋がやっと建っていた。4畳半ほどの薄暗い小屋の中に便所と台所、扉のない傾いた洋服ダンスが置かれていた。その箪笥にはシャツや服が1枚1枚きれいに折りたたまれ整然と置かれていた。コンクリートの床もよく掃除が行き届きチリひとつなかった。しかし、いったいどこで寝るのだろう? 僕のそんな顔を見て「上よ」と言って壁に立てかけられた梯子をするすると登って行った。「来ていいわよ」上に上がると3畳ほどの部屋がありベッドらしきものが置かれていた。小さな板をパッチワークのように打ち付けた壁は隙間だらけである。夏はいいがこれから冬になると寒いだろう。
 今まで多くのファベーラの家庭を見てきたが、協力してもらうことに慣れると、それを当然のことと思い、働くこともせずモノをもらうだけになる家族もいた。ファベーラには向上心をもって一生懸命働く人は少ないかもしれない。彼女の小屋に行って、真面目に懸命に生きようとする姿勢を感じた。僕に、どういうことができるか解らないができるだけのことはしたい


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