4・27 苦い思い出 (2013/04/28)
久しぶりに美術館に向かう。 途中、路上生活者らしきカップルが、廃墟となったビルの入り口で身体を絡ませるようにして寝ていた。まるで2匹の大蛇が絡まりあっているような淫靡な匂いがあった。 端正な顔立ちをしたひげ面の白人男性に抱きつき、太ったモレーナが寝ている。女性は肉づきの良い背中を歩道に向け、まるで男を外敵からかばっているかのように、男にひしっと抱きついている。女の方が、男に惚れているのだろう。 黒い背中の肉に食い込んだブラジャーのヒモと、絡み合った二人の足が生々しい。おそらく、二人はクラックを吸って、人通りのまったくなくなった路上脇で今朝がたまで本能の趨ままに饗宴を繰り広げていたのだろう。その余韻のけだるさが、女の肉づきの良い背中から発散されていた。 写真を撮ろうとした瞬間、女の背中が揺れた。あまりのタイミングの良さに「拒否」を感じ、止めた。また、苛まれそうである。 10数年前、僕に安らぎをもとめ、いつもアパートを訪れる薄幸な女がいた。何度か女を疎ましく冷たくあしらった覚えがある。もう少し優しくしてあげればよかった。いつの間にか彼女がこなくなってそう思った。 男に抱きついて寝る女の背中をみていると、何故か、この女のことを思い出した。 遠い昔の,苦い思い出。
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