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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
5・1 せちがらい世の中

5・1 せちがらい世の中 (2013/05/02)  うっすらと明るくなり始めた早朝に、犬を散歩しているといろんな人に出会う。ほぼ時間が毎朝同じであるから出会う人もほぼ同じ。いかにも、どこかのお店で働いているといった感じの楚々とした女の子、野菜をバールに届ける配達人、古着を路上で売るおばさん。そして、左肩に1mほどのマリア像を担ぎ、右手に一斗袋のような白い袋を持ってヨタヨタ歩いてくるおじいさん。
 このおじさんが、なぜマリア像を担いで歩くのか不明だが、散歩するときにはいつも出会うので毎朝この行を行っているのであろう。ときおり、マリア像を置いて、ハトにパンをやっているのを見かける。この白い袋にはパンがいっぱい入っていたのである。量の多さから見て、パダリア(パン屋)で昨日の売れ残りをもらっているのだろう。
 ある時、薄汚れた服をまとった、いかにも路上生活をしているといった感じの黒人の男女が、おじいさんにパンをくれないかと手をだして懇願している所に出くわした。以前おじいさんがパンをハトにやっているのを見て、袋の中にパンがあることをしっていたようである。
てっきり、おじいさんは彼らにパンをあげるものだと思ってみていたが、2言3言、おじいさんはこのカップルに言った後、再び歩き始めた。離れていたので何を言ったのか聞こえなかったが、この時は「ハトにやるくらいなら、人にやってもいいじゃないか、信仰心が厚いわりには、冷たいな」と思いながら、このおじいさんを追い越したことがある。
しかし、今考えると、パダリアから「決して人にはやらないでくれ」と言われていたのかもしれない。以前は、余った食べ物などをファベーラなどの恵まれない人たちにあげていたレストランがたくさんあったが、ファベーラの人々がお腹を壊したとレストランを訴えたことがあった。それ以来、売れ残った食べ物をあげるレストランはなくなってしまった。
 ブラジルでは、親切心を起したばかりに多大な損害を被ったという人々は結構多い。世の中がせちがらくなって、鵜の目鷹の目で金を追い求める人間が多くなった。親切をして、あとで面倒くさくなったりしないか心配しなければならないならば、そんな親切はしない方がましだ、と思うのももっともである。このおじいさんがなぜあげなかったのか、いまだにわからないが、何か理由があったのかもしれない。


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