5・3路上のミュージシャン (2013/05/04)
いい被写体はないものか、と夕のパウリスタ通りを歩いていると、ドラムとサキソフぉーンの音がと耳に飛び込んできた。結構うまい ずっと、路上の音楽家を撮り貯めているので、いい感じで撮れればいいなとおもながら、音源を求めて歩いていくと、パンダと馬が演奏していた。それも結構ノリノリでヒートしている。 最近少し肌寒なったとはえ、今日はちょっと歩いただけで汗ばむほどの暑さである。パンダと馬の被り物をしての演奏はさぞかし大変だろうと思いながら写真をとる。 その変わった演奏に、人垣ができて、誰もが携帯やカメラで写真を撮っているので僕も遠慮なしにバシバシ撮れる。かなり暗く、ISOを上げてもシャッタースピードが遅いのが難であるが、1枚くらいは、ぶれずに撮れているだろう。こういう条件では、できるだけたくさん撮るに限る。当たるもハッケ、はずれるもハッケである。 おお~、パンダがドラムの馬に絡む、馬が、興奮して、首を振る。シャッターチャンス! フラッシュをたくとその場の雰囲気がなくなってしまうので、運よくブれずに撮れることを祈るばかりである。 7時がちかづくにつれ、どこからともなく楽器を下げたミュージシャンが集まってきて思い思いの場所で演奏し始める。ギター、バイオリン、トライアングル、見ていると皆そこそこ弾ける若者たちばかりである。 僕が、今まで撮ってきた人々は楽器を持っているだけでまともに弾ける人は少なかった。やっと食いつないでるようなバイオリンを持ったおじいちゃんは、僕が弾いてよ、と頼むと、音楽を奏でるどころかキコキコ鳴らすだけだったし、普段は物もらいをしているのを時々みかけたギタリストは、ジャンジャンかきならすだけではあったが、ヒートしてノケゾリを見せてくれた。なんとか曲をやっと吹けるクラリネット吹きは、ほとんど人通りのいない日曜日、セントロのビルディンング街で自分自身を慰めるように吹いていた。楽器はまともに弾けないかもしれないが、皆、重い人生をかかえている人たちばかりであった。写真を撮らせて、と言うのも怖いような顔をした人ばかりであった。 それだけにパウリスタでみるミュージシャンたちは、僕には物足りないように感じた。いや、正確には被写体としてはと言った方がよいかもしれない。 有名になることを夢見て、セントロの、夕の雑踏で、ダミ声でノルデスチのフォルクローレを歌っていたあの男はどこに行ってしまったのだろう。夕のセントロを歩くたび、あのダミ声を思い出す。
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