移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2020/07/03)
9・4 見栄っ張り

9・4 見栄っ張り (2013/09/04)  路上で、スプレーを使って絵を描いて売っている様子の写真を撮っていると、いかにも路上生活者らしき男が寄ってきて自分を撮れという。後で、金をくれ、とせびられるパターンかと思い、躊躇したが何故かわからないが撮るきになった。
 カメラを向けると、垢で汚れた赤いシャツを着て帽子をかぶった4,50歳のこの男は、鼻歌を歌いながら、身体をゆすり始めた。2枚の写真を撮って、立ち去ろうとすると、「ちょっとお金くれない。小銭でいいからよ。コーヒー飲みたいんだよ」男が妙に愛嬌のある顔でわずかにはにかみながら言ってきた。
 ほーらきた。やっぱりな、そう思い、そのまま立ち去ろうとしたが、男の愛嬌のある顔がなんとなく気にかかり、ずぼんのポケットをまさぐった。
「別に、要求しているのじゃないよ。俺は」
 その男の言い方が面白く、「今、あんたは要求しているじゃないか」と笑いながらいうと、体裁悪そうに下を向いてにやりと笑った。この時、なぜ自分が写真を撮って、今お金まであげようという気になったのか、解った。この男は妙に憎めないところが、僕の何かにひっかったのだ。僕はかなりの気紛れだから、高圧的な態度をとってきたり、あまりにしつこかったりすると、いくら相手が強暴そうな奴でも、絶対にあげない、意地でも何もあげない。そんな自分が、お金をあげる気になったことに自分でも驚いた。
 ズボンのポケットには思っていた以上に小銭が入っていた。おそらく10レアルちかくあっただろう。そこから1レアルだけあげようか、と一瞬頭を過ったが、そんなけち臭い自分を見せるのが嫌だった。手一杯ある小銭を全部、男の汚れた手に落とした。男は目を丸くして顔中皺だらけにして、よろこんで行ってしまった。一言くらい礼を言えばいいのに・・・。自分はバス代でさえ払うのが惜しくて歩くのに、あんなにお金をやるなんて・・・、自分の見栄っ張りが嫌になってしまった。お金は天下の回りものだから、またいつか自分のところに回ってくるだろう、と自分を慰めるしかなかった。


前のページへ / 上へ / 次のページへ

楮佐古晶章 :  
E-mail: Click here
© Copyright 2020 楮佐古晶章. All rights reserved.