9・21ウクライナの訪問販売人 (2013/09/21)
友人の事務所で仕事の打ち合わせをしていると、ガラス戸越しに人の気配がするので後ろを向くとニコニコ笑いながら白人の金髪青年が立っていた。友人が「なんですか」と聞くと 「コンニチワ~、日本人ですか? ワタシは日本スキデス」ギコチナイ日本語を喋りはじめたい。いかにも人のよさそうな顔をしている。 「入ってもいいですか? ワタシはウクライナ人です」友人がうなずくと小さな小箱を持って中に入ってきた。 一瞬、なんだこいつは? と思ったが、友人が中に入れてしまったからしょうがない。ブラジルでは知らない人間は絶対家や事務所の中には入れない。拳銃を持った押し込み強盗が多いからだ。 来る途中で3,4人の集団の横を通り過ぎた。そこから「ウクライアーノ」のという言葉が耳に飛び込んできたことを思い出した。ウクライアナ人のコロニアは南のクリチバに行けばあるが、サンパウロでは聞いたことがなかったので珍しいなとそのとき思った。おそらくこの青年があの中にいたのだろう。 笑顔を絶やさず「見てもらえますか?」普段あまり外を歩かない友人はキョトンとしている。最近、コンピューターが入るほどの小さなスーツケースに時計やネックレスを入れて路上で販売するアフリカ人が増えたので僕はすぐピンときた。 「勉強のために買ってほしいんです」 その青年がA4ほどの箱をあけると、マトリョーシカ人形のキーホルダーやウクライナの土産物と思われる小さな人形が入っていた。 一瞬いくらくらいするのか、興味を覚えたが、まったく買う気はないので、聞くのをやめた。だいたい、学費を稼ぐために、1軒1軒家や事務所を訪問して売り歩くなんて聞いたことがない。学生なら、皿洗いでもボーイでも、なんとか働くことを考えるだろうから、おそらくヒッピー系の旅行者だろうが、ヒッピーほど崩れた雰囲気はない。 しかし、ブラジルで特にサンパウロで訪問販売するなんて何も知らなすぎる。知らない人間なんて家に入れるブラジル人はまずいないだろう。でも、その積極な行動には感心した。僕にはとてもそんな真似はできない。 箱を開けたままニコニコ笑顔をたたえている。 「残念だけど、買うつもりはないんで」と僕が言ったにもかかわらず、「勉強のために・・・」とまた同じことを繰り返し始めた。 友人が「買えないですけど、頑張ってください」というと、やっと理解したようで出て言った。 路上で売った方が手っ取り早い気もするが何故売らないのだろう。ヨーロッパ人と見るからにすぐ解る白人の青年だから、意外に気を許す人が多いのかもしれない。しかし、もし彼がアフリカ系の黒人だったら、怪しい人物にみなされ圧倒言う間に警察に通報されるだろう。こういう時、見かけの良い白人はつくづく得だと思う。 僕自身、営業が苦手でなかなか仕事をとれない。営業じたいはできなくても、せめて彼をみならっていろんなところに足を運んで友人知人に会うくらいはしなければならないのだろうな、と思ってしまった。
 | ウクライナ人、コロンビア人、ボリビア人、アフリカ人・・・・Wカップや、オリンピックが近づき、世界中からいろんな人間が集まってきているような気がする |
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