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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
9・30 セ広場で [画像を表示]

9・30 セ広場で (2013/10/01) 雨がショボ降るセントロを歩く。なんやかやと雑務があって、数日歩くことができなかった。
 いつも、ギターを弾いて歌っている12歳ほどの男の子は今日はいない。雨が降っているせいだろうか? セ広場に入ると、人だまりができている。見ると、倒れた路上生活の50歳ほどのおばさんが何かわめきたて、男が何かしている。集まった人が騒いでいる様子もはやし立てる様子もない、ということは大したこともないのだろう。ブラジル人は、何かあれば必ず大声ではやし立てるから。女性はわめきながらゴロンゴロンと濡れた地面を転がる。止めさせようと? する同じく路上生活者の男は、ピンガを飲んでいるのか、木を移動するナマケモノのように動きが異常に緩慢である。女に触れると、青色のセーターがめくれ、女の白い腹の肉がぶるんと揺れた。白豚のようなたるんだ肉の揺れが生々しく脳裏に焼き付いた。
 写真を撮ろうかと一瞬迷ったが、さすがにそうもできず、そのまま教会側に歩くと、汚いよれよれのコートを羽織った男が、しゃがんで絵を描いていた。しばらく描いたかとかと思うと、急に離れ、歩行者に何か話しかけている。その動作を何度も繰り返す。描いている姿が妙に気にかかり、彼の様子をずっと見ていたのだ。教会の写真を何枚か撮っていると、この男が近づいてきた。遠目では、ボロボロの帽子を深くかぶっていたのでよくわからなかったが、レゲエヘアーの黒人であった。
 なぜ、この男が近寄ってくるのか解らなかった。写真を撮っただろうといちゃもんをつけに? あるいは隙を見てカメラを盗もうとして? ファインダーをのぞきながら、もう一方の目で、男を追う。警官が15mほど先にいるから、まさか盗みを働こうとはしないだろうが・・・・。
 男は僕から2mほど先で立ち止まると、「コインないかな?」妙に優しいなよっちい声と喋り方である。おそらく、彼はゲイだ。「写真撮らないか? 絵の」これは願ってもないことである。彼と絵を撮らしてもらおう。しかし、ズボンを探ると、25センターボコインが3枚あるきりだった。あとは50レアル札。コインを渡すと、「ちょっとピンガを飲んでくる。絵はすきに撮っていいよ」そう言い残して彼はそそくさと言ってしまった。「えっ」と思ったが彼はもうそこにはいなかった。警官がじっとこちらを見ていたので、僕もそのままその場を立ち去った。
 10年ほど前にリオでストリートチルドレンが虐殺された写真が世界中に流れていらい、警察は外国人がブラジルの汚点となるようなモノを撮ったりすると以上にうるさい。別に悪い事をしているわけでもなんでもないが、警察にはかかわらないのが一番である。
 しかし、せめて絵だけでも撮っておけば良かった、今更ながらに後悔する。明日もう一度行ってみよう。

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セ広場の樹木も、ここ数日でぐっと若葉の芽吹きが増えた。


 


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