移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
11・20危ない危ない

11・20危ない危ない (2013/11/21)  今日は、お世話になった知人に頼まれた、カラオケの撮影で1日仕事である。8時半にリベルダーデに向かう。普段はこの時間だと通勤する人々が行き交うが、今日は「黒人意識の日」(この訳は直訳過ぎて変な感じがするが、ヤフーニュースで使われていた)で人通りもちらほらである。
50mほど先で、路上生活者風の黒人の若者が、通りかかった男性にたばこをせびっている。お金をせびられたり、絡まれるの嫌で、早くいかないかなと思いながら、ゆったりと足を進めた。都合の良いことにその黒人は進み始めた。これは何もなしに終わるかと安堵したとき、この黒人は後ろを振り向いて僕を見た。何かたかれるかと思ったのか、歩く速度を落とし、僕にちかづいてきた。
3mほどに近づきさらに僕の方に寄れて2mほどになった。持っていた一脚を持ち直した。さらに寄っていたので、もうそれ以上寄るなという意味を込めて軽く一脚を持ち上げて威嚇した。この僕の動きに触発され、カッとしたのか、一瞬男の顔がゆがみ、よくわからない奇声あげた。「ジャポネス、やるのか!」とでも言ったのだろうか?
この時、担いでいるカメラ用のリュックにはカメラや望遠レンズ、その他もろもろが入っていた。強盗に急変する場合もあるので、僕としては2m以内には近づけたくなくて一脚を振り上げたのだが、おそらく、小銭でもらえれば、と思って近寄ってきたこの男を刺激したようであった。
この男を振り切り5mほど歩いたところで、後ろを見ると、男は僕の方に飛びかかる体勢をとった瞬間であった。2キロちかい一脚をバットを握るように両手で握り、彼を迎え撃つ覚悟を決めた。もし来たら、躊躇せずに思いっきり振り切るつもりであった。相手を傷つけるのを恐れて躊躇して一脚を捕まれたら逆にやられてしまう。ブラジル人の力は決して侮れないし、非力で体力もない僕が、こうした男を撃退するためには、気合で、それこそ生きるか死ぬか、殺すとまではいかなくても傷つけるくらいの気持ちでかからないとやられてしまう。
両手に力を込め、足を踏ん張り、思いっきりぶち叩ける体勢をとる。すると男が懐から取り出したものが、キラリと光った。20センチほどのナイフだった。僕が怖がると思ったのだろう。しかし、こちらは1mほどの一脚を持っている。余計に気合が入った。もしこの一脚があたれば、いくら僕が非力とはいえ、怪我はする。「躊躇をすると僕も刺される。躊躇しちゃダメダ!」 自分に言い聞かせた。僕の気合に押されたのか、黒人男は、僕をからかうように「カリカラカリカラ」と中国語の真似をして引き返した。
意外に自分が落ち着いて対応できたのに少し驚いた。ブラジルに来たばかりの頃、強盗に襲われたことがあった。その時は怖さなかったが、怒りで身体が動かず、顔面を殴られ4針縫ったことがあった。今は気持ちの用意ができているからだろうか?
後でいろいろ考えると、最初、彼は小銭をもらえればいい、と思ったくらいで、襲うなんて考えてもいなかったと思う。それが、僕が一脚を振り上げて、近寄るなといった態度をとったので、彼もバカにされたように感じて襲ってくるような態度をとったのだろう。しかし、現実に彼は刃物を持っていたわけだし、いつ強盗になってしまうかわからない。高価な機材を持っていたのであれ以上近寄らすわけにはいかなかった。路上生活者や、ストリートチルドレンは普段虐げられているから、犬のように扱われると、敏感に反応する。相手が弱いとみると、どんどんつけいってくる。野犬の対応と同じように弱みをみせたり、逃げたりすると付け入ってくる。
 おそらく正しい行為は、「悪いね、お金を持っていないんだ」と言って上で、それ以上さらに近寄ってくるようだったら、一脚で脅せばよかったのだ。ちょっと逸ってしまった。僕の相手をもうすこし思いやる気持ちがあれば彼もこういう態度はとらなかったかもしれない。
 どちらにしろ、一番いいのは、できるだけ目立たないよう歩き、素早く危なそうな男をみつけ、近寄らないようにすることだと思う。


前のページへ / 上へ / 次のページへ

楮佐古晶章 :  
E-mail: Click here
© Copyright 2024 楮佐古晶章. All rights reserved.