12・17 ブラジル人の執念深さ (2013/12/18)
メルカードに行く途中、25・デ・マルソ通りに入ろう間際で、長身の男が寄ってきた、避けようとすると、前をふさぎ、足をかけようとする。 「何をするんだ!」かっとなって声を荒げ大声をあげたが、男は知らん顔をして、手に持ったお札を数えている。こんな男は知り合いでもなければ見たこともない。なんとなく後ろに2,3人のおかしな気配を感じる。警官がいないかと、あたりをうかがうが周辺にはいそうもない。声をあげると男はそれ以上何もしなかったが、後ろの気配が気になったので、すぐその場を離れた。 25・デ・マルソ通りは卸の店が集まる、サンパウロ最大の地域で、クリスマス、正月を控え、毎日数万人の買い物客でごった返す。その買い物客を狙った強盗スリが横行し、テレビでも毎日のように注意を促している。大量の警官も投入されているが、それでも、泥棒たちはあらゆる手段を使って買い物客のお金を狙い被害は後を絶たない。 僕の前に立ちふさがったのはたぶん泥棒だったと思う。知らない人間の前に立ちふさがるなんて普通ではない。7時半という早朝だったこと、僕の服装や様子が買い物客でもなかったことを考えると、気の弱そうな中国人に見えたのだろう。ポ語で声を荒げたので、襲うのをやめたのだと思う。それでも、もし、僕が転べば、一斉に襲いかかってきたような気がする。腹が立ってしょうがなかったので、よっぽど警官に通報しようかと思ったが、通せんぼをされたくらいで、何をするでもなかったし、襲われそうになったという証拠もなかったので、警官に通報しても無駄だと思いあきらめた。気が弱いくせにカッとなると我を忘れて向かっていく。悪い癖である。体格があり、空手など護身術を身に着けていればいいが、まともなケンカさえやったことの無い僕は、向かって行っても途端に返り討ちにあってしまうだろう。頭の中で、ジャッキー・チェンのようにバタバタと悪者を倒すシーンを思い、少しウサをはらす。・・・まったく情けない。 メルカードで肉屋のアミーゴに先ほどあったことを話した。 「もし、警官に通報したたらどうなっただろう?」 「もし、男が捕まったとしても、2,3日後には、釈放されるから、次にもし遭ったらぜったい仕返ししてくるだろうね。 俺なんかも、肉屋のユニフォームをきているから何もされないけど、普通着で25デ・マルソを歩いていて襲われそうになったことが何度かあるよ。特に今は危ないよ」 ブラジルに来たばかりの頃、移民の人によく聞いたのが、ブラジル執念深さであった。 「柔道の黒帯の日本人が、ブラジル人と喧嘩になってやっつけたんだよね。でも次の日に4,5人の仲間とナイフや銃をもって仕返しにやってきてコテンパにやられるっていう話はいくらでもあったよ。強盗を通報して、仕返しされるなんて話もよくあるよね。だから仕返しされるのがいやなら、殺すしかないよ」 この話を聞いて、また過激なことをいうものだ、と思ったが、長らくブラジルにすむようになって彼のいうことが決して過激とはいえないことが解ってきた。それほどブラジル人は執念深く、嫉妬深い。
|