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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2020/10/26)
1・8 危なかった~

1・8 危なかった~ (2014/01/09) 夜9時、暗くなったアベニーダ・リベルダーデを、友人とセ広場方面に歩いていた。
と突然、後ろから背負っているカメラ用のデイバッグが引っ張られた。びっくりして後ろを振り向くと、プロレスラーのような褐色の肌をした大男の腕が僕のデイッパクの根本をつかんでいた。うっすらと汗をかいた、丸太のような大きな腕が街灯にてらされヌラヌラと光っていた。ぎょっとした。友人と話をしているうちに油断して、男が近づいてきた気配を一切感じなかったのだ。
「ジネーロ、ジネーロ(金、金)」、男の声が耳に飛び込んできた。怖いという感じはなかったが、あまりにびっくりして自分の顔が痛いほどひきつっているのが解った。建物側であまりに突然のことに驚き、固まっている友達の姿が目に入った。格闘技やスポーツを普段からやっていなければ、とっさに身体が反応できない。このことは僕自身もそうなので良くわかる。ブラジルに来たばかりの頃、襲われたことがあるが、身体が驚きと怒りで固まってしまい殴られっぱなしだった。普通の人はとっさになかなか身体が動かないト思う。
何故か、自分のひきつった顔を見られるのが恥ずかしかった。そんなことを感じている状態ではないのだが・・・。その時、チラリと男の後ろに仲間らしい人影が見えた。
いくらかのお金は胸ポケット入っていたが、お金を渡すなんて考えは一切頭に浮かばなかった。デイッパクに入ったコンピュータを盗られると困るなという気持ちで頭の中は一杯であった。幸いなことに、普段はかならず持っているカメラは、荷物が増えすぎるのでもっていなかった。
街灯にてらされて、隙だらけの男の顔が、見え隠れする。まだ若い! 一瞬、空いている手で殴ろうか、という考えが頭に浮かんだ。しかし、非力で人を殴ったことも無いような僕が殴っても、ほとんどダメージを与えられないだろうし、もし拳銃や刃物を持っていれば男の気持ちに逆に火をつけ、傷つけられる可能性もある。この時はなぜか冷静に頭がはたらいた。声もはっせず、ずるずるとさらに車道に逃げているうちに、ふっと軽くなった。男が手を離したのだ。何故、男が手を離したのか解らなかったが、そのまま車道の反対に逃げた。大声をあげて、だれかれ構わず助けを求めれば、もっと早く男は逃げただろうに・・・。とっさに、大声をあげられなかったのは僕も冷静さを欠いていたと言う事だ。
今、思うと、男は、捕まえれば僕が立ち止まってすぐ金をだすと思ったのだろう。予想に反して、「金、金」と叫ぶ男を無視して、反撃はしないまでも、さらに僕が逃げようとしたので驚いたと思う。建物側に僕を追い込むべきだったのである。僕が車道に逃げようとするのを止めることができなかったのが彼の敗因である。男は、こうした犯罪に慣れていないのであろう。経験豊かな強盗でなくて本当にラッキーであったと思う。
殴られて以来、何度か強盗にあいかけたが、これほど近くまで近寄らせたのは初めてのことであった。ここサンパウロでは、たとえ、人と一緒の時でも緊張を解いてはならないのだ。
実は、朝から、不穏な動きを感じていたので、何か起こるのではないかとビクビクしていた。案の定起きてしまった。家までの道すがら、僕の勘もまんざらではないと妙な感心をしてしまったが、こういう勘は外れてもらいたい。


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