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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
2・24 室伏 鴻 「クイック・シルバー」を見て [画像を表示]

2・24 室伏 鴻 「クイック・シルバー」を見て (2014/04/24)  舞踏家、室伏鴻氏に会ったのは、かれこれ14,5年前のことであった。舞台の撮影後、どうしたいきさつかそうなったのか全然覚えてないが、氏と飲みに出かけることになったのだ。舞台の裸の氏と異なり、白いズボンに黒っぽいシャツ姿の氏は、颯爽として恰好良かった。その時の氏から受けた印象は未だに覚えている。背筋ピン通った姿勢からは、サムライの毅然としたイメージを受けた。何を話したか全く覚えていないが、僕のようなド素人の舞台感想も嬉しそうな顔をして聞いてくれたのが印象に残っている。しゃがれた声でカラカラと笑う気さくな人だった。
 あれから何度もブラジルで公演は行ったようだが、僕は全くしらなかった。今回たまたま、新聞で公演があることを知り、チケットを慌てて買いに行った。サンパウロでは、大野和夫、山海塾、その他の舞踏が公演され、根強い人気があるのだ。チケットが完売していないか心配であったが、運の良いことに、一番前の列の席が空いていた。
15年以上ぶりにみる室伏氏のダンスがどのように変わっているのか楽しみであった。もっとも、その変化を僕自身が感じることができるだろうか? という不安な気持ちもあった。
 公演は9時から。ここ数か月9時以降、外をあるくことがなかったし、最近、息子が襲われたばかりだし、会場にまで行くのが不安であった。とにかく一番安全そうな道順を通って行くことにした。本当はタクシーを使えばいいのだが、お金がもったいないし、タクシーはとにかくきらいなのだ。普段からよっぽどのことがない限りタクシーは乗らない。
 題目は「クイック・シルバー」何の情報もない素のままで見る。氏よりずっと若輩者の僕がいうのも、おこがましいが、「この人は、この15年の間良い年を重ねてきたのだな」と感じた。
 「大駱駝艦」のサンパウロ公演で、突然スイカを放り投げるシーンがあった。割れて真っ赤な中身が飛び散る様子に目を見張った。スイカを投げた意味がわからず、団長の麿赤児氏と話す機会があったので、何か意味があるのか聞いてみた。「別に意味はないですよ。観客をはっとさせたかったから」と言われて、気が付いた。かならずしもすべての動きに意味があるわけでないだ。もちろん、舞踏家によっては、それなりのメッセージや意味を持たせる動きをしている人もいるのだろうが・・・。それ以来僕は、演劇にしろ、舞踏にしろ、絵画にしろ、自分自身の勝手なイメージで見るようになった。たとえそれが的外れでも、それはそれでいいではないか。それがその時の自分が受けた印象なのだから。
 氏の公演を見ていて、「死へ向かう己」を感じた。僕自身、老いに片足をつっこんだ年齢になったのでその感覚にダブッタのかもしれない。決してキレのある動きとは思えなかったが、肉体の動きひとつひとつが、シーンのひとつひとつがずっしり重かった。肉体の表現は、以前以上に凄みをましていた。見終えて、あの世を覗いたような不思議な感銘をが残っていた。

*家に帰って、ネットで「クイック・シルバー」を検索してみると、いろんなバージョンがあることを知った。検索したが、ほとんど情報を見つけられなかった。残念


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