9・2 ヘタなポルトガル語と勘の悪いブラジル人 (2014/09/02)
「何が必要なものはありますか?」 「もう,頼んだから」 「何が必要なものはありますか?」 「もう頼んだよ」
メルカードのいつも行く魚屋での出来事であった。 初めて見る顔の黒人男性が、さっきからしきりに僕にたずねてくる。その度にちゃんと答えているのに、彼は僕のポ語が理解できないようである。僕の発音は日本語訛りでひどいことは僕自身重々解っている。 「彼、全然何も解っていないみたい」ともう一人の従業員に言った。「あんたのいう事ぐらい解っているよ」と僕がいっているのに、再び「彼は全然何も解っていないみたい」と言葉を繰り返した。 最初が、聞き流していたが、「全然」という言葉を2回聞いてカチンときた。 「解ってないのはおまえだろう! 何を言っているんだ」そう言って無視をして他の従業員と話し始めた。そうしているうちに彼は、バツ悪そうにハッポウスチロールの箱の後ろにこそこそと隠れてしまった。 話しているうちに少しずつ落ち着いてきた。おそらく彼はこうした客商売の仕事は初めてなのだろう。ましてや、日本人、中国人がくる店など入ったこともないのだろう。だから僕の喋る日本語なまりの強いポルトガル語なぞポルトガル語とは思ってもみなかったのだ。 以前、サルバドールに行ったとき、ホテルの場所を聞きたくて、若い女性に尋ねたことがある。何度か「HOTEL」と繰り返したが、彼女は理解できなかった。さすがにこれにはびっくりした。いくら僕の発音が悪いと言っても、ホテルくらいは解るだろう。彼女には、僕の言葉を理解しようなんて気持ちはちっともないから、僕が発する言葉は外国語にしか聞こえなかったのだ。ちょうど同じことが彼にも言える。 彼は、本当に融通の利かない朴訥なブラジル人なのだ。まったく悪気はないのだけれでも、彼のように勘がめちゃくちゃ悪いブラジル人をときどき見かける。頭を冷やしているうちに、そのことに気が付き、彼に悪い事をしたな、と、ちょっと反省。 しかし、周囲にいるブラジル人は皆解っているのに、彼一人解らなかったということは、よっぽど勘が悪いのだろう。おそらくあまりのトロさに来週はクビになっているような気がする。もし、まだ来週いたら、ゆっくりとした口調でやさしく話しかけてみよう、と思っている
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