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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
10・31 おじさんとCD [画像を表示]

10・31 おじさんとCD (2014/10/31)  通りでいつもアコーディオンを弾いているおじさんに、随分前に「撮った写真を一枚ちょうだいよ」と言われていた。忘れていたわけではないがなかなか印刷する機会がなく、のびのびになっていた。
 僕のプリンターは日本製の写真専用の大型機械でインクももちろん日本製である。当然ここでは売っていないから、日本に行くたびに大量に買ってきていた。もちろんインクも問題であるが、もっと問題なのがインクの廃液である。受け皿がいっぱいになれば、動かなくなるらしい? 発売されて5年以上になる古い機種だけにインクの減りも激しく、電源を付ける度にインクが減り、廃液が溜まっていく。なので、たった1枚の写真のために印刷をする気にはならなかった。ここが日本なら、例え廃液が一杯になってもまた新しいものに買い替えればよいだけなのだが、ここブラジルではそうはいかない。そんな訳で、随分長い間おじさんに写真を渡すことができなかった。
おじさんが、単なる思い出に欲しがっているものと僕は思っていた。今日写真を渡すとおじさんは非常に喜んでくれた。ずっと待っていたようだ。
「ありがとう。ありがとう。これで俺の音楽のCDができるよ。もう録音は終わっていたし、後はカッパ(表紙)を作るだけだったんだ」
「えっ、これで作るの? それは止めた方がいいよ」
「表紙にはあんたの名前を入れるから教えてよ。もうブラジル中で販売されるんだから」
「別に名前なんてのせないでいいよ」
 もしかしたら、「CDを出してあげるから」と言われてだまされているんじゃないだろうか? 最近、通りで歌ったり、楽器を弾いたりしているオジサン達は、自分のCDを持っていて売っている人が多くなった。そうしたオジサン達を食いモノにしている奴がいるのかもしれない。しかし、何も知らないことに外国人の僕が口出しするのもおかしい。だいたいこのおじさんのことさえ何もしらないのだから。
「ほら、このCDに録音していれているんだ。これに名前をかいてよ。写真○○っていれるから」
おじさんはそう言って、ブラジル製の、安物のCDをちょっと誇らしげに見せてくれた。
 ほんとうはあまり載せてもらいたくなかったのだが、おじさんに写真を使ったことで僕に訴えられるかもしれない、というようないらない心配を後でさせるのも悪いと思い、とりあえず名前だけ書いた。気軽に写真やビデオを撮らしてくれ、サイトに載せることまでも許可してくれたオジサンに少しでもお礼をしたかったのだ。
「印刷をした写真をスキャナーしたらクォリティが落ちるからCDにイメージを焼いてあげるよ」
「え、そんなことができるの?」
来週もってくることを約束して別れた。
 のんびり、ほのぼのしたおじさんの張りのある歌を聞いていると、昔の良き時代のブラジルが蘇ってくるようで、僕はすきだ。僕の撮った写真で、おじさんがよろこんでくれれば、それはそれで素敵なことだなと、思っている。

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