12・7 サンパウロの年末 (2014/12/07)
約束の時間が迫り急いでメトロに乗り込んだ。パライゾ駅を通り過ぎ、約束の場所にもっとも近いヴィラ・マリアーナ駅に、あと1分ほどで着くあたりで、突然、40前後の女性の良く通る声が上がった。 「セニョーラ、セニョール。お騒がせしてすみません。 先日、失業してお金がなくて、小さい子供が4人いる我が家は困っています。 昨日から何も食べていません。子供達は「お腹が空いた。お腹が空いた」と訴えます。 ・・・・・・」 その言葉は、まるで韻を踏んでいるようで、詩を聞いているようであった。彼女のたんたんとしたよどみのない喋り方もあり、気持ちの中にしみこんできた。いったいどんな人が言っているのだろうか、と興味を覚え車内を探したが、7割がたが埋まった列車内では、声が聞こえてくるだけで、見つけることができなかった。もう少し聞いていたかったし、できれば幾ばくかのお金を渡したかったが、メトロは目的の駅のプラットフォームに滑り込み、後ろ髪をひかれる思いで降りた。 あれだけ淀みなく喋ったということは、しばらくやっている人なのだろう。年末には、この手の手合いが多い。しかし、彼女の言葉は心に染みた。きっと本当に家庭が大変で、どうしようもなくてメトロでお金を乞うているのだろう。そう思いたい。 今、サンパウロは数年ぶりの失業率の高さらしい。年末だけに、バスやメトロでこうした人々が増えそうだ
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