12・17 路上ミュージシャンとCD (2014/12/17)
遭うたびに写真を撮らしてもらっている、路上のアコーディオン弾きのセニョールに久々に会った。 作っているというCDの出来具合に聞いてみた・ 「うん、もうすぐできるよ」と言ってニッコリ笑った。果たしてCdがどれくらいでできるものか興味が沸いた。路上で弾いて、その募金で作れる程度なのか・・・? 「そうね~。1枚1.5レアル(約70円)だよ。20枚でも作ってくれるし、100枚以上作れば1レアルだよ」 思った以上に安かったので驚いた。 「その他に録音のスタジオ代1日かりて200レアル~300レアルかかるよ」 多くの路上ミュージシャンが1枚10レアルで売っているから、売れたらそこそこの収入にはなる。実際は売るのはなかなか難しいとは思うが。 「今、ホテル住まいで1日32レアルかかるんだ」とセニョールが嘆いた。もし、1か月ホテル住まいとしてホテル代だけで月1000レアル近くになるから結構な出費である。さらに食費などのことを考えると、月々1500~2000近くは必要となる。ごくごく普通の人が稼ぐ給料である。1か月路上の募金で稼ぐとしたら大したものである。最近、路上ミュージシャンが増えたのも納得がいく。 そういえば、知り合いの高知のミュージシャンも「月に何度か夜の繁華街で演奏をするけど、お金を稼ぐのはそれほど難しいことではなよ」と言っていたことを思い出した。人口のさほど多くない高知でさえもお金を稼ぐのはそれほど難しいことでないのだから、サンパウロで半日以上弾けば意外に稼げるのかもしれない。 「CDの表紙に写真の宣伝を載せたら、良い宣伝になるよ。50レアルだけど、どう?」と言ってニヤリと笑った。残念ながら全くそういう気はなかった。 もちろん言うつもりはないが、本当は頼まれて撮った場合は、撮影代が欲しいくらいなのだ。CDに僕の写真を使って欲しいなんて一切考えてないし、宣伝に名前さえのるのも望まない。 今までずっと路上のミュージシャンを撮影してきたが、おそらく7割がたの人は、日払い下宿屋や安い市施設に寝泊まりしていて、まともに家に暮らしている人は非常に少ない思う。そんな人たちにのっかって金儲けをしようとは思っていないし、金になんかなるはずがない。むしろお金が絡むとせっかくの友人か関係が壊れてしまう。一瞬、CDのができたらお祝いに50レアルを渡そうかな、と思ったが、僕自身も余裕のある生活をしている訳でないし、遭う度に幾ばくかの募金はしているので止めた。 「その気はないよ」と言ってその場を去ろうとしたとき、後ろから 「良いクリスマス、年始年末を迎えてね~」と声をかけてくれた。ちょっと曇りかけた気持ちがその言葉を聞いて、風鈴にそよぐ夏風のようなセニョールの優しい気持ちを感じた。
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