12・19ブラジル事件簿1:ブラジルの不条理ー襲われた日系老人の怒り (2014/12/19)
午前6時、サンパウロの一般的な住宅街のごくごく普通の家でこの事件は起きた。 父親71歳と娘の日系人親子が仕事に出かけるために、いつものように車庫から車を出そうとしている所だった。その時、まだあどけなさを残した15歳と18歳若者二人組が開きかけたガレージの鉄柵から身体を滑り込まし銃を突き付けてきた。娘は運よく逃げだし、裏の塀を越え隣人に助けを求め警察に連絡した。警察が急行し、犯人たちに武器を捨て投降を呼びかけ犯人の母親も説得にかけつけた。2人の犯人は、日系老人を小突きさんざんいたぶり、「自分は未成年だから、何をしても罪にならないんだ」と嘯いた。 事件から2時間後、警察や説得にかけつけた母親を見てどうにもならない、と判断した若者達は投降をすることを決め、警察の要求通り拳銃を車庫にある車の天井におき、屋外にゆっくり出てうつぶせになった。2人の警官が手錠をかけようと2人に向かった。事件から2時間後、家からでてきた犯人は地面にうつぶせになり周囲は無事「終わった」とほっと安堵した。 ここまでは、最近のブラジルで良く見かける事件であったが、ここから先が驚く展開となった。
犯人の後にいた日系老人が目前にあった拳銃を掴み、よろよろと亡霊のように歩みながら犯人に銃口を向けたのだ。これを見ていた警官一人が大声で叫んだ。 「No!(止めろ!)」「No!(止めろ!)」事件が解決し緩みかけた周囲の雰囲気に稲妻のような緊張が走った。警官の声に後ろを向いた犯人は、先ほどまで、さんざんいたぶっていた老人が銃口を向けて、よろよろと自分たちに向かってきているのを見て雷に打たれたように驚いた。すっかり観念し大人しく手錠を受けようとしていた犯人は慌てて立ち上がり泡を食って逃げ出した。手錠をかけようとしていた警察もあまりに突然のことで、2人を放してしまった。2人は数m走って周囲の警官に取り押さえられた。 銃口を向けられる怖さ、死の恐怖を犯人は思い知ったと思う。同時に撃てなかった日系老人の無念が痛いほどよくわかった。犯罪を犯しても未成年ならば罪にならず、せいぜい6か月間収容所に入れば釈放されるのが今のブラジルの法律である。犠牲者が、どんなに心に傷を負っても、たとえ殺されても、この法律は覆らない。それが今のブラジルである。国民の多くは、こんな不条理な法律が存在することをおかしく思いながらも生活していくしかないのである。
右腕を小突かれ出血していた老人はかなり興奮していて、そのまま救急病院に運び込まれた。もし、この日系人老人が怒りに任せ発砲していたらどうなったのだろう?
「忘れて、ゆったり休んでください。そして引っ越して快適な生活を楽しんでください。6か月後に未成年の犯人は釈放されまた襲ってくるでしょうから! これがブラジルなのです!」とアナウンサーが締めくくった。
ブラジル人には、日常的に見かけられる事件かもしれないが、僕にはこの主人の犯人対する怒りが、そして不条理に対する怒りがよく解った。悪いことも、人に迷惑をけることも、なにもしていないのに、なぜ長年住み慣れた住居を引っ越ししなければならないのか? 身を守るため、家族を守るために仕方がないが、こんな不条理なことがとまかり通るブラジルはやはり3流国としか言いようがない。
ビデオ:ニュース・サイトR7より 編集もなく載せているので何度も同じシーンが流れます。16分15~17分20を見てください
|