2・21ソルチ(運) (2015/02/21)
アコーディオン弾きのオジサンが今日は、いつもと異なる場所で弾いていた。 「どうしたの、今日は?」 「うん、あそこは人通りが少なくて、ソルチ(運)がないから、こっちに移ったんだ」 タクシーの運転手にしろ、風俗女性にしろ、お客がついた時に、よく「ソルチがあった」という言い方をする。オジサンが同じような言い方をするので、妙に面白かった。 「さあ、握手してくれよ。あんたの金運を分けてくれ!」と言いながらしわくちゃの手を差し出した。正面向かってそういうことを言われると僕のわずかな金運も吸い取られてしまうような気がして一瞬、躊躇してしまった。 しかし、考えてみれば、もともと僕の金運などほとんどしれている。「こんなわずかな金運でも良ければ、半分分けてあげるよ」という気になって、差し出してきた手を握った。もしかしたらわずかな彼の金運を僕が吸い取ってしまうかもしれない、そんなことを思い、つい笑ってしまった。 「あんたにもらった穴の開いたお金(5円玉)はなくしちゃって、運がこなかったけどね~。写してもらった写真はいいみたいだよ」 最初あったときは、いつもニコニコ、ひょうひょうとアカーディオンを弾く人で、決して弱音を吐くようなオジサンではなかった。それがこの頃は会うたびに、ポロポロと弱音を吐くようになった。聞きもしないのに苦しい生活状況を放してくれると言うことは、少しは彼の心の内に入ったということかもしれない。僕にしても決して余裕のある生活をしているわけではないので、わずかな募金をするくらいしかできないが、お金があるときはできるだけ募金するようにしている。 田舎の赤い大地にそよぐ風の様な、オジサン大らかな歌声が好きだ。今の僕には何もできないが、オジサンの運が少しでも上向いていくことを祈りたい。
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