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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
4・3 小市民

4・3 小市民 (2015/04/03)  家と絵の撮影を頼まれ、古い高級住宅街のアウト・デ・ピンニェイロスに行く。

「今はデジタル写真の時代だから、誰でもあるていどの写真は撮れますよ。僕が撮るとお金がかかるから、誰かにたのんで撮った方がよいですよ」と電話で話したが、それでも撮って欲しいといわれ、行くことになったのだ。本当を言うと、雑誌などに使う訳でもなく個人が使うとの話だったので、それほどお金も要求もできないし、その割には大変な仕事なので、僕自身あまり乗り気ではなかった。色合わせをしながら、きっちり四角に撮るのは意外に難しいことは、何度か絵の写真を撮っていたからよく知っていた。

 この地区は、古くからお金持ちが住んでいるせいか、樹木が多く閑静で、僕が住むセントロと同じサンパウロとはまるで思えない。ちょっと大げさに言えば、ヨーロッパの住宅地のような雰囲気さえ感じる。違いはどこの家も高い塀で囲い、さらに泥棒避けの電線が塀の上に張られ、カメラが備え付けられていることである。

 写真を頼まれた家は、とにかく大きかった。3つのスイートルームに2部屋の仕事部屋、子供部屋、そしてテニスコート半面ほどの居間、これらの部屋にはアンティークの家財がさりげなく置かれている。まるで高級ホテルのスペシャルルームのようだ。外にはプールにシュラスケイロ(肉を焼く場所)がある。こんな大きな家に住むのは老夫婦だけで、家政婦が2人もいた。

 おそらく、これだけのお金持ちでもブラジルでは中級クラスの上あたりだろう。ときどき行くファヴェーラ(貧民街)のことを考えると、まさに雲泥の差である。僕が住んでいた頃の日本は、ほぼ皆平均的生活をしていただけに、田舎に住んでいた僕には貧富の差なんてほとんど感じずに育った。それだけに同じ人間なのにこれだけの貧富の差があるなんて不公平だと思わずにいられない。しかし、これがブラジルの現実だから仕方がない。大きな家に住んでいるからと言って幸せだとは限らないし、ファベーラに住んでいるから不幸だとも言えない。もしかしたら幸せ度から言えば、皆同じかもしれない?

 大きくて豪華な家に住みたいと思わないが、ベニヤ板で囲った隙間風が吹きこむような小屋に住むのも嫌だ。適度な家に、適度なお金があれば、それで十分である。(実は意外にこのような生活が難しい)つくづく自分は、日本の小市民なのだと思う。

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